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和風の部屋にジャンルレスな民藝品が集う平屋。
ART & MUSIC 2024.03.18

和風の部屋にジャンルレスな民藝品が集う平屋。

長年住んだ東京を離れ、鹿児島に移住したイラストレーターのオカタオカさん。モノづくりが根づく町に身を置き、平屋の自宅には国内外の民藝品や家具のほか、最近は鹿児島の作家の作品も少しずつ増えてきた。そんな住まいから見えてきたのは、和風の部屋の設えを活かすインテリアの工夫と、ジャンルレスなモノの選び方。そして、生活そのものを豊かに彩る心地良さのヒントだった。

INFORMATION
オカタオカ(イラストレーター)
オカタオカ(イラストレーター)
宮崎と鹿児島の県境で育つ。桑沢デザイン研究所卒業。書籍、アパレル、広告など幅広くイラストレーションを提供し、ペインティングのみならず、セラミックやウッドカットなどさまざまな手法の作品も発表している。近年ではカーアクセサリーブランド「HIGHWAY/南国灰道倶楽部」をスタートさせるなど、その活動は多岐にわたる。

創作意欲と収集欲をくすぐる、“モノづくりの町”の暮らし。

九州の南西部に位置する鹿児島県日置市。豊かな山林と美しい海が隣り合う長閑な場所に、イラストレーターのオカタオカさんは暮らしている。自宅の前にはミカン畑が広がり、その向こうで竹林がゆらりと風に揺られ、心がほっと落ち着くロケーション。数年前まで東京で忙しく暮らしていたオカタオカさんは東京・鹿児島の二拠点生活から始め、次第に鹿児島の暮らしが気に入り、2022年に完全移住を果たした。

オカタオカさんが暮らすのは、2LDKの平屋住宅。昭和に建てられた懐かしいタイプの戸建てだが、外壁はネイビー、屋根がダークグリーンと、遠目から見ると海外の住居のようにも見える可愛らしい佇まいだ。ときを紡いできた古めかしさと新鮮なカラーリングが他のどこにもない個性となり、同じ昭和生まれの愛車「HONDA」シティともよく似合う。

「鹿児島にはクラフト作家やデザイナー、モノづくりを生業にする人が多く住んでいます。二拠点生活をするうちに作り手の友人が少しずつ増え、僕自身もモノを作ることの楽しさを実感できて、ここで暮らしたらもっと心が豊かになりそうだなと。そんなワクワクするイメージが広がったことが移住のきっかけになりました。今はまだ構想段階ですが、ゆくゆくは自分のスタジオ、あるいは妻と一緒に何かをする場所を作りたいなと思っています」

時間があるときは、家の近くにある友人の家具製作所へ遊びに行ったり、親しいクリエイターのスタジオに立ち寄ったりして、外に出かけることも多い。木工、陶芸、染色など、モノづくりが盛んな町に身を置くことで、自然と作家との出会いが増え、オカタオカさんの家にも地元のクラフト作品が増えつつあると言う。

古い平屋はまさに一点モノ。修繕の跡も個性やムードに変わる。

「『和風の平屋じゃないと嫌』という絶対的なこだわりはありませんが、僕がいいなと思う家がだいたい築30〜50年の物件が多くて、自然と選んでしまう。前の住まいは畳敷きの古風な家でしたが、今の家は全室フローリング。和の要素を残しつつもさっぱりとした雰囲気にリフォームされているので、古さや重厚感が適度に軽くなっています。平屋は動線をワンフロアに集約しながら仕事場と生活スペースを部屋によって区切れるから快適です」

昔の家の間取りでよく見られる細分化された間取りについては、できる範囲でアレンジを。部屋が広く開放的に感じられるように、LDKの仕切りの扉をすべて外し、ひと続きの空間にチェンジ。大きなダイニングテーブルからはキッチンやリビング、窓の向こうの景色までも見渡せて、ここが家の中の好きな場所だと語る。

「このダイニングテーブルは家具屋さんでひと目惚れして、部屋の広さを考えずに勢いで購入したもの。前の家では壁にベタ付けして片面を潰していたので、ようやくテーブルをまるっと囲んで食事ができるようになりました。友人を招いて、ここでごはんを食べるのが楽しみです」

和室の設えと美学を活かしたディスプレイ。

家の中には、古き良き和室の設えがあちらこちらに。例えば、小窓には幾何学模様の昭和型板ガラス、南向きの大きな窓には柔らかな光を取り込む障子、リビングの床の間には躍動感のある落とし掛けも。日本建築の職人技が生かされた装飾は、そこに飾られる一点モノの民藝品やアートと調和し、部屋の持ち味、ひいてはその家の個性へと昇華する。

「本当は鴨居や柱がなければ部屋がスッキリと広く感じられるのかもしれませんが、こういった設えが空間に味わいを与えているし、僕が好きな空間のポイント。昔の日本家屋に見られる飾り棚や、“間”を感じる余白を見つけるたびに、『ここにアレを飾ろう!』と楽しみが膨らんでいくんですよね」

板の間には、前の家で使っていたディスプレイ棚がジャストフィット。長押(なげし)はモビールやドライフラワーなど、吊って飾るインテリアとして活躍。襖を外した押入れはアートとレコード類を並べ、縁側や出窓には鉢物の植物を。和室の木の温もりと建築様式が、無数に並ぶアイテムをまるごと包み込むように空間にまとまりを与えている。

「和室の造りを活かしたディスプレイが楽しいなぁと、住みながらじわじわと体感しています。好きなモノに囲まれていたいですし、お気に入りのアイテムが並んでいるとやっぱりテンションが上がりますよね。オブジェ単体にしても空間全体にしても、ふとした光景からイラストのアイデアが湧いたりするので、家の中の“飾るスペース”は大切です」

あえてのジャンルレス。気分で置き換えるフレキシブルな選択。

居間には、世界中を旅して見つけたフォークアートが有名・無名にかかわらず賑やかに並び、家具もベルギーやフランス、メキシコ、アフリカなどジャンルレス。移住前から少しずつ集め始めたという鹿児島のアーティストの作品もたくさんあり、まとまりがないようで、全体が妙にしっくり馴染んで見えるからオカタオカさんの審美眼に興味は増すばかり。

「幼い頃から変わったモノを集めることが好きなんです。“変なモノ”と言うと怒られそうですが、周りの友人からなかなか理解されない脇役的なモノが好きでした。若い頃はお金がなかったから、古物屋さんに通って『コレ!』と思うものだけを大切に集めていましたね。飾ることでより一層収集が楽しくなる相乗効果があるので、年々モノが増え続けています(笑)」

オカタオカさんがコレクトするオブジェは、伝統や手仕事の趣きを感じさせる中にも“軽やかさ”や“ポップさ”の要素が入り混じり、重たくなりがちな民藝品特有の空気感を絶妙にほぐしている。クスッと愛くるしい表情をしたぬいぐるみと、無骨で硬派な伝統工芸品がふいに隣り合っているのもおもしろい。

「民藝品は大好きですが、そればかりを集めると重たい印象になってしまうので、ちょっと間引いたり、まったく別ジャンルのモノを混ぜ込んだり、全体のバランスは気にしています。あと、偏ったセレクトや置き方をしたくないので、ジャンルを絞らずあえてゴチャッとさせて、自分の“好み”や“傾向”をカモフラージュさせることも。わりと高価なアートと500円の雑貨を同列に並べることもありますね」

もっと自由に、柔軟に。着眼点を広げる心地良い暮らし。

鹿児島に暮らし始めて約2年。モノづくりの文化を継承するこの地の風土は、オカタオカさんにとってインスピレーションの場となり、ここで出会う人や眺める景色が公私ともにいい影響をもたらしている。

「何かをしたくて移住したというより、凝り固まらず、もっと自由に解放感を楽しみたい思いが一番だったような気がします。今の家は自然に囲まれているので清々しい気持ちでいられるし、すぐ近くに浜辺も広がっています。気晴らしに海岸線をドライブしたり、居心地のいい家でゆっくりコーヒーを飲んだり、ときには作家の友達とおもしろいことを企てたり、移りゆく日々の変化も感じ取りながら健やかに暮らしています」

ひとつずつ丁寧に集めた家具やオブジェのように、住まいも暮らしも縛りを設けずに、自分らしくのんびり楽しみたいと語るオカタオカさん。モノ・家・ひと。それぞれが持つ個性やちょっとしたクセを愛でながら、ときどき見方を変え、配置を替え、好きと思う直感を大切に生活を楽しみ続ける。そんな視点を持てば、オカタオカさんのようにのびやかで心地良い暮らしをめいっぱい謳歌できるはずだ。

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もしオカタオカがSunny Track Houseに住んだなら?
  • Photo/Yuki Katsumura
  • Text/Maiko Shimokawa
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