「好き」を暮らす
ユニークな内装建材で人気の「toolbox」と一緒に、LIFE LABELでは「住む、が一生の趣味になる」をテーマにしたコラボレーション住宅「ZERO-CUBE TOOLS」をスタート。そこで、家族の「好き」を追求し、心地いい暮らしを送るさまざまなご家族を訪問。好きが詰まった暮らしのヒントを教えてもらいます。第2回目はボタニカルブランド「The Landscapers(ザ・ランドスケーパーズ)の塙麻衣子さんのお宅をお邪魔しました。
人と植物が共存できる
緑に囲まれた暮らし
塙 麻衣子さん(The Landscapers)
自然の多い環境で生活しながら緑を
テーマにしたプロダクトを制作
2014年、緑に囲まれた鎌倉山への移住を機に、ドライフラワーやエアプランツなどの植物とプロダクトを組み合わせたボタニカルブランド「The Landscapers」を立ち上げた塙麻衣子さん。2016年には自宅近くにグリーンとインテリアを扱うショップ「AROUND」をオープン。個人住宅や店舗のガーデニングやグリーンコーディネートも手がけています。
どうしても心惹かれる
人生の「好き」を3つ
住宅プランナーの仕事を経て、造園会社で働いていた塙さんには、昔から自宅に取り入れたい「好き」がありました。それは、緑のある広い庭を持つ、ゼロからの家づくり、自然と共に暮らすこと。激務の生活のなかで見つけた鎌倉の物件は、まさに夫婦の「好き」が詰まった理想の環境でした。
約210坪の土地には草木が生い茂り、あたりはジャングルそのもの。そんな一見手強い環境こそ、植木職人のもとで働いていた塙さんの腕の見せどころ。人力では難しい地盤改良もダンプカーなどの重機を用いて、地元の職人とともに開拓していきました。
土地をゼロから地盤改良して
好きなものが詰まった庭へ
念願叶い、緑豊かな鎌倉山の一軒家を購入した塙さん家族。広大な敷地には草木が乱立し、うっそうとしたジャングル状態。
「まず、庭の下地づくりとなる地盤改良が必要でした。ここは以前畑だったようで、有り難いことに土の性質はとても良かったんです。とはいえ、広大な敷地を整えるのは予想以上に大変で、自分たちの力ではどうにもならない。そこで、近所で仕事をしていた地元の造園会社の方に声をかけ、一緒に下地づくりをしてもらいました。柚子や枇杷、キンモクセイなどの残したい樹木を決め、それ以外はダンプカーで運び出して。なんと15台分にもなったんですよ(笑)」。そうして出来上がった庭に階段を備え、新たな芝を植え、堀を立て、大理石のアトリエも建てることに。このアトリエが塙さんの新たなブランド「The Landscapers」の制作現場。
子どもたちのすぐそばで仕事ができて植物と共に暮らせる、塙さんが希望していた“幸せ家族計画”の足がかりとなりました。そして、バルコニーの下にはガラス張りの温室を設置し、海外から輸入してきたエアプランンツの栽培もスタート。「夜になると気孔が開くので、そのタイミングで水やりをしたり、寒くならないように温度調節したり、いろいろと手間がかかりますが、自宅下に温室をつくれる贅沢な環境に感謝しています」と、自慢の庭と温室にうれしそうな塙さん。
今までの建築の知識を活かして
住みながらのリノベーション
以前住んでいたマンションを売って鎌倉山の家を手に入れたので、家族4人で住みながらのリノベーションとなった塙さんの自宅。
「まだお風呂もキッチンも使えない状態だったので、近所でお風呂だけ借りたり、銭湯に行ったり。住みながら職人さんたちと作業を進めて行く生活でした。工事をする職人さんはやりづらかったんじゃないかな(笑)。でも“この柱は残そう”、“ここは土間にしよう”など、その都度話し合えたので良かったと思います。もともと大学では建築学科を専攻していて、卒業後は家具メーカーに就職し、住宅プランナーとして仕事をしていたので、そのときの経験をこの家のリノベーションにしっかり活かせました。建築ソフトを使って間取りやプランを考えて、それをもとに職人さんと改装して。建具も自分たちで見つけて購入し、できるだけコストを押さえて、自分たちのなかで“ここはこだわろう、ここは切り捨てよう”と取捨選択の連続でしたね。こだわったのは間取りの部分。広いリビングにしたかったので、壁をすべて壊して、キッチンから家族の様子が見渡せる空間にしました。洗面所のタイルも自分で考えたんですよ。子どもの頃の記憶って鮮明なので“あの頃の実家のタイルって、なんか面白かったよなぁ”って、子どもたちにいつか思い出してほしくて。好きな家をゼロから作りたいというのが若い頃からの夢だったので、念願叶いました」。
大好きな空も山も緑も見える
この景色がずっと欲しかった
そうして、仕事場となる庭と暮らしの基盤になる家が完成したものの、塙さんいわく「まだまだこれから。特に、庭には“これで終わり”がありません」とのこと。
「家は竣工すると大体の形ができますが、庭はいつだってスタートライン。春になれば雑草はどんどん生えるし、秋には落ち葉もすごい。毎日なにかしら手を加えて付き合っていく存在です。でも、だからこそ、都会暮らしでは味わえなかった四季を感じる暮らしを手に入れることができました。窓からは広い空が眺められるし、いつだって緑が広がっている。東京では見られなかった星も沢山見える。そんな光景を見るたび、“あぁ、私たちはこの景色を買ったんだ”と思えるんです。東京で暮らしていた頃は、平日は夫婦でフルで働いて、休日になったら“さぁ、どこへ行こう”ってお金を使う遊びしかなかった。でも、ここでは家族がそれぞれ好きな時間を過ごせるんです。少し足を運べば、海も広がっているしね。引っ越してきた頃は、いい大人が朝から海でサーフィンしている姿があまりに多くて“あの人達って働いているのかな……”なんて思っていたんですけど、この付近の人は働き方が上手なんです。集中して仕事をガッと終わらせて、あとは自分の好きに遊ぶ。私自身、昼まで自宅でゆっくり過ごす罪悪感が、ここに来て見事に消えました(笑)」。
これからの住まいの
楽しみ方は?
自分と家族の
「好き」の新しいカタチ
自分たちの“心地いい”をたくさん詰め込んだ住まいも、時間の経過や子どもの成長に合わせて、その姿は多様に変化していきます。ライフスタイルに合わせて必要な空間をチョイスできる「ZERO-CUBE」に住むなら、どんな使い方をしたいのかを塙さんに聞いてみました。
「一番欲しいのは、近所の人や植木屋さんと交流できる土間スペースですね。例えば、近くに用事があって我が家にフラッと寄ってくれたとき、わざわざリビングまであがってもらうのは互いにワンクッションあるけど、靴を脱がないでも済む土間があれば、そこで気軽にお喋りできますよね? 昔の農家の家ってそういう場所があって、人を気軽に迎えられる待ち合いルームのようになっていたんじゃないかと思います。あとは、仕事や家事から解放されて、一人で過ごしたいときがあるので、屋上で空を眺められる“隠れ家”が欲しいです。寝転がれるイスを置いて、本を数冊持ってきて。自然を感じながら母でも妻でもない時間が過ごせるのは素敵ですね。」
そんな塙さんの自宅には、ご主人のグラフィックやアート本、写真集が本棚にギッシリ。アフガン製のクラフト感漂う絨毯や、アアルトが調理学校のためにつくったとされるダイニングテーブル、柱にはドライフラワーや民芸品など、温かみのある家具や雑貨が至るところに飾られています。昔の味わい深いプロダクトが好きだというご主人と塙さんの趣味で、リノベーションした住まいはいっそう温かみのある空間に仕上がっていました。そんなプロダクトを土間にも並べて、お菓子やお茶を楽しむ空間にしたいと言います。「職人さんが泥だらけでもOKです。だって土間ですから。そんな敷居の低いスペースが自宅にあるともっといろんな人との交流が楽しめそうですね。」
「ZERO-CUBE +BOX」を土間にして、イスやテーブルを置き、お茶やお菓子を気楽に食べられるスペースに。訪問してくれた人がリビングにあがらなくてもお喋りができる空間にしたい。
自然の多い場所で家族4人暮らしたい、そこで子どもたちを身近に感じながら仕事をしていきたい。そんな塙さんの夢は、都会から鎌倉山に引っ越したことで大きく前進。発展途上の住居スペースが今後どんな表情を見せるから楽しみです。
塙 麻衣子さん
鎌倉山への引っ越しを機に、ボタニカルブランド「The Landscapers」を設立。主にプロダクトデザインやガーデニング制作を担当する。リノベーションした自宅と庭は、レンタルガーデン&ハウススタジオとして貸し出している。二児の母。
http://www.landscapers.jp/
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