「好き」を暮らす
ユニークな内装建材で人気の「toolbox」と一緒に、LIFE LABELでは「住む、が一生の趣味になる」をテーマにしたコラボレーション住宅「ZERO-CUBE TOOLS」をスタート。そこで、家族の「好き」を追求し、心地いい暮らしを送るさまざまな家庭を訪問。好きが詰まった暮らしのヒントを教えてもらいます。第4回目は鈴作家・イソガワクミコさんのお宅をお邪魔しました。
鈴を製作しながら暮らしたい
イソガワクミコさん(鈴作家)
心地いい鈴の音色が
暮らしに寄り添うように
兵庫県の丹波篠山で手づくりの「銀の鈴」を製作しているイソガワクミコさん。地金づくりから始まり、デザインや彫金、鍛金まですべて一人で行う丁寧な物づくりや軽やかで清涼感溢れる鈴の音には全国にファンが多数。ときに、生まれたばかりの赤ちゃんにお守りとして制作してほしいとの依頼もあります。
どうしても心惹かれる
人生の「好き」を3つ
田んぼや畑に囲まれた丹波篠山で、お子さんを育てながら手仕事で鈴をつくるイソガワクミコさん。農家の祖母から受け継いだ家で、じっくり取り組みたい「好き」がありました。それは、自身の鈴づくり、古い家を直しながら住むこと、自給自足の生活。自然豊かな盆地でマイペースに3つの「好き」を深めています。
キッチンの片隅にあるイソガワさんの作業スペース。家事をして、生活をする空間から、繊細で美しい音色の鈴が生まれていきます。
誰かの暮らしに寄り添う
お守りのような鈴をつくりたい
チリンチリンと、繊細な音色を奏でる手づくりの鈴。短大を卒業後、東京でジュエリー制作の専門学校に通ったのち、沖縄の石垣島で彫金教室を開いたイソガワクミコさん。現在は、祖母から受け継いだ丹波の自宅で、豊かな自然に囲まれながら鈴づくりを行っています。
「昔からなぜか鈴が大好きなんです。鈴の音を聞くと、子供心に妙に安心して。お小遣いを貯めては、10個100円で売っている小さな鈴を買って、いろいろな種類を集めていました。そのうち、自分でも鈴をつくりたいという気持ちが大きくなって。持っている道具を使って、現在も試行錯誤を繰り返しながらつくっています」。
金属を溶かすところから始まり、熱して、延ばして、叩く。細かな工程を繰り返して、小さな鈴がようやくできるそう。1個つくるだけでも長時間かかるので、イソガワさんの工房はキッチンのすぐ横。家事をしながら作業できる場所に工房を構えました。「子どもが小さい頃は目が離せなかったので、様子を見ながらキッチンで作業していました。今では息子もすっかり大きくなったので、そろそろ専用の工房をつくろうかな」と今後の構想を練っています。
修理するのが好きだから
暮らしながら直していきたい
イソガワさんが現在の家に移り住んだのは15年前。数年かけて自分たちで改装し、自宅と離れをつくっていきました。家具をはじめ、窓や壁、階段にいたるまで手を加え、手づくりの温もりを感じる空間に。離れにはキッチンやシャワールームも完備して、訪問してくれた人がいつでも泊まれるスペースになっています。
「我が家は誰でもウェルカムなんです。大したおもてなしはできませんが、フラッと気軽に立ち寄ってもらえれば。だから門もいつでも開けっぱなしです(笑)。西に向かう途中の友人が頻繁に寄ってくれるので、毎月誰かしら泊まりにきますね」とのこと。確かに、イソガワさんの家には、思わず“ただいま”をいいたくなるような懐かしい空気が流れています。
傷が残る床も、土間の玄関も、子どもの絵が飾られた壁も、どこか実家を思わせる佇まい。「私、古いものや壊れたものをつくり直す作業が好きなんです。特に酔っぱらうと作業したくなるので、夜な夜ないろいろなものを修理していますね(笑)。手を動かしていると幸せなので、何かをつくっているときが一番ワクワクします」。だからこそ、改修し甲斐のあるこの住まいは、イソガワさんにとって大切な創作現場。大好きな物づくりに没頭できる要素がまだまだたくさん詰まっています。
必要なものは自分の手で。
自給自足の豊かな暮らし
周囲を田んぼや畑に囲まれているイソガワさんのお家。近くに大きなスーパーがあるものの、自分たちで食べるものは自分たちでつくれる環境にあると言います。
「まわりには親戚がたくさん住んでいますし、ご近所さんも家庭菜園をしているところが多いんです。だから、食糧をはじめ、生活に関わる物々交換が日常茶飯事。以前、石垣島で暮らしていたときも、生えている木をそのまま家の大黒柱に使った手づくりの家だったんですよ。そこは電気も水も通っていない場所で、まさに“ジャングルのような暮らし”でした。でも、周囲のいろいろな人と関わって、助け合って、みんなで豊かに生活していたように思います。そういう自給自足の生活が昔から好きで、便利なものやすぐ終わるようなものにはあまり興味がないんです。自分たちで食べるものは、できるだけ自分たちの手でつくりたい。食糧だけでなく、生活用品や小物もつくれるものはまずつくってみる。お金をかけないでどう暮らせるかを模索するのが大好きなんです」とイソガワさんは話します。
そして、いつか物づくりをする友人たちと暮らして、一緒に制作しながら生活していきたいそう。物をつくるクリエイターが多いので、みんなでワイワイと暮らすのも楽しそうだと話します。いろいろな人が集まるコミュニティスペースをここから発信できる日は、そう遠くなさそうです。
これからの住まいの
楽しみ方は?
自分と家族の
「好き」の新しいカタチ
自分たちの“心地いい”をたくさん詰め込んだ住まいも、時間の経過や子どもの成長に合わせて、その姿は多様に変化していきます。ライフスタイルに合わせて必要な空間をチョイスできる「ZERO-CUBE」に住むなら、どんな使い方をしたいのかをイソガワさんに聞いてみました。
「今、一番欲しいものは飼育小屋です。昔、アフリカのケヅメリクガメを飼っていて、14年くらい一緒に暮らしていたんですよ。残念ながら寒さで死んでしまったので、今度はしっかりした飼育小屋をつくって、もう一度、我が家に迎えたい。リクガメって野菜屑や雑草を大量に食べてくれるんですよ。家庭から出た生ゴミもしっかり処理してくれるので、暮らしが無駄なく循環すると思います。あとは、烏骨鶏も飼いたいですね。烏骨鶏は夜になると高いところに上る習性があるので、飼育小屋には木の棒を設置してあげて、朝になったら卵をいただく。彼らのフンは畑の肥やしにしたいです。飼育小屋の湿度が保てるなら、そこでキノコ類を栽培するのも良いですね。」
そんなイソガワさんの家の中庭には小さな池があり、以前そこでエビの養殖を試みたとのこと。「でも、エビの養殖って意外に難しくて……。結局、全部池に住み着いたトノサマガエルに食べられてしまったんですけど、ここで何かを養殖できたらと思っています」と、自給自足ライフの構想がますます広がっていきます。食べ物も美味しく、盆地だから高齢者でも暮らしやすい丹波。すぐ近くには大きなスーパーも点在しているのに、自然に囲まれた理想的な環境。この場所で、循環していく暮らしを送るのが面白いと話すイソガワさんでした。
「ZERO-CUBE+BOX」を飼育小屋にして、ケヅメリクガメや烏骨鶏を飼うスペースに。家庭から出た野菜屑などをエサにして、こちらは卵をもらったり、フンを畑の肥料に使いたい。
自然の豊かな丹波で鈴づくりをしながら、無理のない自給自足の暮らしを送りたい。そんなイソガワさんの夢は、今後も周囲の人と関わりながら、ますます広がっていきそうです。
イソガワクミコさん
銀の鈴の彫金作家。結婚や出産など、人生の節目にそばに置きたいお守りがわりの鈴をオーダーメイドで制作。金属を溶かすところから多くの手間をかけて仕上げる繊細な鈴の音には多くのファンが。二児の母。https://isogawakumiko.weebly.com
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