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みんなが主役になれる、キッチンの間取り。
FOOD & HEALTH 2022.10.20

みんなが主役になれる、キッチンの間取り。

浅川 あや/雑貨店日用美 店主

キッチンのモノの置き場やレイアウトは人それぞれ。「広さは?」「導線は?」「どこに何を収納する?」。台所に立つ人によって、使い勝手の良いキッチンの間取りは変わってくる。今回は、器を中心に温かみのある日用品を取り扱う、雑貨店「日用美」の店主、浅川あやさんの自宅にお邪魔し、キッチンの間取りとマイルールを教えてもらった。

INFORMATION
浅川 あや(雑貨店日用美 店主)
浅川 あや(雑貨店日用美 店主)
あさかわ・あや|内装設計施工会社、インテリアショップなどを経て独立。現在は神奈川県・二宮町にて、時を経て美しくなる雑貨店「日用美」を営み、毎週日曜日にはカステラの製造・販売も行う。

二軒目の家で叶えた暮らしと、こだわりのキッチン

「ここに住みたい。土地探しで初めてこの場所を訪れたときにも、経年美化に近い感覚がありましたね」
10年住んだ鎌倉を離れ、新たな拠点に選んだのは神奈川県の西南部に位置する二宮町。その小高い丘の上に浅川邸は建てられている。

みんなが主役になれる、キッチンの間取り。

左奥に見える洋館を修繕し、雑貨店「日用美」の店舗になっている

「引っ越しのきっかけは、実を言うと息子が通っていた保育園に影響されたこともあり……。逗子の山の麓に園舎があったんですけど、そこでは子どもたちが大きな畑で農作業を楽しみ、アウトドアキッチンでピザを焼いたり、環境教育の一環でコンポストなどにも取り組んでいたり、すごく素敵な場所だったんです」

「一方、当時私たちが暮らしていた鎌倉の自宅は約30坪の小さな家。決して不便な暮らしではなかったんですけど、周りは住宅に囲まれ、焚き火なんかできない。それがなんだか寂しく感じたんです。いつか家の周りで焚き火を楽しめたらなって。そして、出会ったのがここでした」

海と山があって、都内まで通える場所。この2つを土地選びの条件に約2年を費やし、ようやく辿り着いた理想の場所。「木々が生い茂り、築80年以上の日本家屋と洋館が荒れ果てた状態で残っていたんですけど、奥に見える洋館は修繕すればそのままお店として使えそう。新しいモノにない味わいを、そのまま残したい。そう感じられたのも、ここを選んだ大きな理由でした」

小さな洋館は浅川さんが営む「日用美」の店舗として生まれ変わり、日本家屋の跡地には新たな戸建てを。「外にいるような内側を作りたかった」と、ふんだんに設けた全面ガラスの外周建具には、その土地のポテンシャルを最大限に活かすためのカーテンレスを選択し、借景を楽しめる空間に。
「鎌倉の家ではできなかったことを、たくさん詰め込んだ家です。吹き抜けは主人の希望、私のこだわりはキッチンに」と内装設計の経験を活かし、図面を自ら引くことで使い勝手の良いキッチンを完成させた。

キッチンは家の中心に据えて。

「キッチンのすぐ裏が玄関なんですけど、みんなが出入りするのは大体ここ」と勝手口に目をやる浅川さん。

外から見ると、玄関と勝手口は並ぶようにあり、出入りする手間はさほど変わらないようにも思えるが、「特に息子なんかは、ここで私が料理していると後ろをスーって通り抜けることが多く……。キッチンを抜けるとそのままバスルームに繋がるので、外で遊んで汚れたらそのままお風呂へ。我が家のキッチンは、意外と“人通り”が多いんです(笑)」

家の中で、モノが一番溢れかえる場所と言っても過言ではないキッチン。生活感を隠すために独立型を好む人もいるが、浅川邸のキッチンはあえて“人通り”の多い、家の中心にある。
「ここに立っている時間が一番長いので、常に家族の気配を感じられるよう生活の中心にキッチンを置きたかったんです。ここなら1階全体を見渡せるし、庭で遊んでいる息子の様子も見える。2階で作業している主人の元にも声が届くんです」

収納は、思い切ってオープンに。

キッチンの後ろにあるオープンシェルフには、浅川さんが目利きした器たちが綺麗に並んでいる。店舗で扱う陶器はもちろんだが、日常的に使う器も「買うときは、作家さんとお友達になってから」と直接工房を訪れ、作り手の想いやランドスケープに触れることを大切にしているよう。

新しければ新しいほどいい。世間一般的にモノの価値は完成したその瞬間が一番高く、時の経過とともに下がっていくとされるが、彼女の自宅にあるモノは“時の経過”を美しく感じさせるものばかり。

「もちろん、使っていくうちに汚れたり傷ついたりするのは当たり前です。けれど、手間をかけて作られたモノは使った形跡が味わいにとって変わると思うんです。出来立てが完成形っていうのではなく、暮らしのなかで完成していくというか。そういった経年美化を楽しめそうなモノにいつも心を惹かれます

そうして手に入れた、特別な器や道具たち。彼女からしてみれば、それを眺めているだけでも幸せなひとときであるはず。しかし、「別に飾りたいからオープンシェルフにしたわけじゃないんです」と話を続ける。

「先ほど話したように、器も使うことで味わいや愛着が増すもの。決して飾るものじゃないんです。パントリーのような部屋みたいな空間を作ってしまうと、しまい込んで使わなくなってしまうので、あえて棚には扉をつけず、手に取りやすいようオープンにしました」

取り出しやすさを重視したオープンな収納は、ときに衛生の面でも理にかなう。
「木や竹製品って、洗った後に水気をしっかり乾燥させておかないと黒ずんだりカビが生えたりするじゃないですか。でも、これなら通気性が良く、片した後にもちゃんと自然乾燥してくれる。そういった点でもオープンな収納は好都合なんですよ」

みんなで使えるアイランドキッチン

「この家には私の両親も一緒に住んでいます。なので、普段の食事作りは主に私と母が担当。一緒にキッチンに立つことが多いので、それぞれが背を向けた状態でも作業しやすいよう、通路幅は1200ミリに設定しました」

「床は、何かをこぼすのが前提で」と金鏝仕上げのモルタルを採用し、「丘の上という立地上、冬は特に寒くなるので中に断熱材を2層入れて」と防寒対策もバッチリ。

みんなが主役になれる、キッチンの間取り。

手入れのしやすい床同様、キッチンの天板にはステンレスをチョイス。

「家具のようにしたかった」とフルオーダーしたアイランドキッチンは、家の内壁に合わせて表面を白に、内側には木材を使用することでインテリアに馴染むデザインに。
しかし、浅川邸のキッチンを見ていると、ふと違和感を覚える点がある。

「壁付きタイプのアイランドキッチンを作る場合、一般的には壁際にコンロを置く選択が多いんですよね。実際、鎌倉に建てた家がそうでした。けれど、コンロが壁の近くにあると油ハネによる壁汚れが気になって……。
いっそのこと飛び散った汚れは床丸ごと拭いた方がラクに手入れできるんじゃないかと思って、思い切ってシンクを壁際にしたんです。まな板やコンポストを壁際に寄せて置けるので、見た目もスッキリしましたね

「ときどき主人がキッチンに立ったり、息子やその友達も遊びに来たらここで簡単な料理をしたり。私も作家さんを招いて食事を楽しんだりするんですけど、そうやってみんなが集まるキッチンを作りたかったんです。見せる収納にしているのも、誰がキッチンに立っても迷うことなく必要なものをすぐに使えるように、という想いがあるんです

シンク上のオープンな吊り棚と、その下にぶら下げられたグラスや調理道具。どこからでも手を伸ばせる、いい意味で前後のないキッチンは、家族とゲストの笑顔を生む、心地の良い暮らしの要にもなるのかもしれない。

  • Photo/RYOSUKE YUASA
  • Illust/HARUHI TAKEI
  • Text/GGGC
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