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ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。
ART & MUSIC 2024.02.08

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

日常を特別にしてくれるアウトドアリビングを採用したり、自宅の一角にサウナをビルドインしたり、壁に防音材を敷き詰めて部屋を丸ごとライブスタジオしたりと、大きく様変わりしている家の在り方。そこでLIFE LABELでは「◯◯◯ in da house」と題し、自宅に”好き”を体現する人たちの“趣味(仕事)部屋”を取材。憧れの平屋に拠点を移したことで心機一転。暮らしも、創作活動もより楽しくなったという、アーティストのERI TAKAGIさんのライフスタイルに密着する。

INFORMATION
ERI TAKAGI(アーティスト)
ERI TAKAGI(アーティスト)
えり・たかぎ|1996年、神奈川県生まれ。2019年よりアーティストとしての活動を開始。モノにあふれる現代に疑問を持ち、着飾らない自然体でいるスタイルの美しさを表現している。好きなものは、サーフィンとみかん。湘南を拠点に、日々制作に打ち込んでいる。

アーティスト活動のため、1年で脱サラ。

眺めているだけで心が晴れる、ポップなカラーを大胆に使ったERIさんのアート。そんなポジティブな作風こそ彼女のアートワークの真骨頂といえるが、絵描きとしてのルーツを尋ねると「じつは生まれたときに心疾患と診断されて、それで」と真率な性格のERIさんは、これまで公にしてこなかったことを口にした。

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

アトリエの壁に立てかけられた制作途中のキャンバス。さらにこの上から何色も塗り重ね、アートを完成させていく。

「中学時代、病院から『運動部は控えてください』と言われてしまい。本当はバスケ部に入りたかったんですけど、中学3年間は吹奏楽部に、高校生に上がっても軽音楽部で活動していました。でも、そこで音の素晴らしさを知ることができて。アーティストとして大切な、感性を養えた気がするんです」

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

動画用の素材。最近はアクリル絵の具を使った絵画だけでなく、モーショングラフィックにも力を入れているよう。

もともと絵を描くことが好きだったというERIさん。小学1年生の頃には少女漫画のコピーを、地元の図書館で植物図鑑を借りては模写を繰り返していたほど。
「ノートに植物を描き溜めて、自分だけの図鑑を作ったりしていました。もしかすると、私の作品に花など植物が出てくるのは、それがきっかけかもしれませんね」
大学では法学部を専攻。卒業後、一般企業へ入社するもアーティスト活動に専念するため1年で脱サラした。そして2019年、彼女はアーティストの道に。

主な制作拠点は、自宅の一室にある。話によると、彼女がキャンバスに向かうのは基本的に夜になってからだが、この日は早朝からアトリエで絵を描いていた。
「今晩、行きつけのご飯屋さんで周年パーティがあるんです。そこでワークショップをやらせていただくので、看板として使う絵をそれまでに……。あと一踏ん張りです!」

創作活動を有意義にする、一部屋丸ごと使ったアトリエ。

塗料汚れの対策に、アトリエ内の壁と床には透明の保護シールが貼られていた。

「ずっと一軒家に住んでみたくて」と、昨年の秋に見つけた賃貸の平屋で創作活動の日々。間取りは1LDKで、奥の部屋がERIさんのアトリエだ。ここに引っ越してくるタイミングでちょうどリフォーム工事が行われ、内装は綺麗に生まれ変わっているが、アトリエ内のアルミサッシやダイヤガラス、古家具などを見ると、どことなくノスタルジックな雰囲気が漂う。

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

アクリル絵の具のストックは、頂き物のアンティーク家具に保管。中段左には大好きなおじいちゃんのミニ仏壇が。

「今まで一軒家に住んだことがなく、この建物そのものを自分のものにしていいんだっていうのは新しい感覚。どんどん可愛い家にしていきたいと思っています」
彼女が生み出すポップな作品を尻目に“可愛い家”と聞くと、浅はかにもカラフルなインテリアを想像してしまうが、ご覧の通り、それは少し違う。

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

カラフルなスケートボードのペイントもERIさんによるもの。

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

向日葵をあしらったレトロなポットは、リサイクルショップでの戦利品。

「理想はおばあちゃんの家みたいな、可愛くて落ち着いた空間。それに少しでも近づけるよう、最近は骨董品屋巡りにハマっています。大家さんからは『外壁も塗っていいよ』と言われているので、内も外も自分が好きなように変えていけたらなって」

住み始めて出てきた問題すら、アイデア次第で楽しめる。

以前住んでいたマンションでも自宅内に備えたアトリエで絵を描いていたERIさんだが、当時の間取りは1K。その頃とは打って変わり、「今は贅沢にこの一部屋をアトリエとして使えるので、創作活動が有意義になりました」と頬が緩む。
「ただ、この家には“冷え”という弱点が。建物自体が築古の木造なので、暖房器具なしでは冬を越せません(笑)。この< TOYOTOMI(トヨトミ)>のレインボーストーブは頂き物なんですけど、暖かいうえに足元に浮かび上がる七色の炎が可愛く、すごく気に入っています」

本来ならベッドスペースとして使われるであろう一室をアトリエにしているため、寝るときはリビングの一角に布団を敷く。“寝場所”としてのプライベート空間を確保するため、ここでの一工夫が大事だという。
「目隠し目的で、寝るときだけは籐(ラタン)のパーテーションで間仕切り。このような植物素材の家具も好きで、特に籐製には心を奪われがちです」

自然光がたっぷりと注ぎ混む、南向きのERIさんの住まい。日中は電気をつけずとも明るく、物件選びにおいてこの「南向き」は高条件とされるが、そこにサーフボードを保管するとなると話は別。というのも、サーフボードは直射日光に弱く、紫外線を長時間浴びてしまうと変色する恐れがある。そのため、サーフボードは日焼け対策が必須。彼女のようにおしゃれなタペストリーでサーフボードを覆えば、大切な板を黄ばませる心配がなく、さらにはインテリアに馴染ませることも可能だ。

サーファーならではの空間は、こんなところにも。
「奄美大島で拾ってきた貝なんですけど、リビングにちょっとした飾り棚があったので、そこに並べてみたら可愛くて。ちなみに、真ん中にある赤く丸いものはソテツの種子。来年の春になったら庭に植えようかなと思っています(笑)」。

海で気持ちのデトックスを。

庭に目を向けると、カギしっぽの猫が1匹、我が物顔で素通りして行った。
「近所で飼われているのか、このあたりをいつも決まった5匹の猫が徘徊してて。さっきの子は、“カギちゃん”。他にも白黒模様の子には“パンダ”、ぶすっとした顔の子には“大臣”とか勝手に名前をつけて、今日は誰がやってくるか密かに楽しんでます(笑)」。

一方、ライフスタイルの一部であるサーフィンを楽しむために、必ず1日のどこかで潮や風の情報をチェックするというERIさん。波が良さそうなら、すぐさまサーフボードを原チャに積み込み、サーフポイントまで愛車を走らせる。

ポップさと懐かしさを詰め込んだ、可愛くて落ち着ける平屋。

この日選んだ一本は、< Birdom Surfboards(バーダム・サーフボード)>のツインピン。

「サーフィンにはじめて触れたのは、6年ほど前。奄美大島に行ったとき、ローカルサーファーの方たちが連れていってくれたんです。みんなが童心に帰って夢中にサーフィンをする、その不思議な光景を見ているだけでも楽しくて。そして、サーフ後の疲労感もなんだか心地よくて」

「それ以降すっかりハマり、3〜4年前から本格的にサーフィンをするように。良い波に乗りたい。サーフィン中はただそれだけを考えているので、無意識にデトックスできるというか。海上がりは良い状態で創作活動に戻れるんです」

何かをクリエイティブする時間が、結局いちばん好きなのかも。

しかし、良くも悪くもサーフィンの頻度が少し減ってきているというERIさん。それは仕事に追われているからという理由でもなく、サーフィンに飽きたからでもない。
「じつは、新しい家が居心地良すぎて。アトリエを一室、いわゆる仕事モードがオンの場所をしっかり確保できたことで、以前ほどストレスを感じることなく、『頭をリセットしたい』と思うタイミングが、少しずつ減ってきて」

「家での生活が充実しているからか、最近は料理する時間すら楽しく思えるんです。とりわけ手の込んだ料理をするわけじゃないんですけど、基本和食を作るので、これからは出汁とりにこだわってみたくて。鰹節とかを集めてみようかな、と考えているんです。絵も料理も、言ってしまえば同じクリエイティブ。結局、自分の手で何かをずっと作っている時間が、好きなんだと思います」

  • Photo/Ryosuke Yuasa
  • Text/Chihiro Ito(GGGC)
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