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アウトドア歴50年。シティを抜け出し手にした “毎日が焚き火し放題”の家。
OUTDOOR 2022.02.17

アウトドア歴50年。シティを抜け出し手にした “毎日が焚き火し放題”の家。

好奇心旺盛な子供のように、好きなアウトドアをより身近に、そしてワガママに愉しむ「偏愛アウトドアLIFE」。中立性を欠く偏った愛だけに、誰もが共感できるものではないが、好きをとことん追求した偏愛ビトのライフスタイルは見ているだけでワクワクするもの。そして、そこにはきっと自分らしく、楽しく生きるヒントが隠れている、かも?

INFORMATION
写風人さん ( フォトグラファー)
写風人さん ( フォトグラファー)
しゃふうじん|長野県駒ケ根市在住の写真家。森で暮らし、薪ストーブは3台を使うヘビーユーザー。薪づくりや焚き火など生活そのものがアウトドアライフ。アウトドアブランドの「ファイヤーサイド」や「グリップスワニー」のオフィシャルカメラマンを務める。

アナログな炎が心地いい、焚き火と薪ストーブのある暮らし

「皆さん、東京からおいでで? 遠いところからこんな山まで、運転も疲れたでしょう。今日は冷えますし、さぁどうぞ上がって。今、コーヒーでも淹れますから」
訪れたのは、2019年より岐阜から長野・南信州に移住し、薪ストーブを中心とした火のある暮らしを愉しんでいるフォトグラファー、写風人(しゃふうじん)さんのご自宅。玄関脇にある薪ストーブの上には薄くスライスされたリンゴとイチゴが並べられ、「嫌いじゃなければつまんでくださいね」とドライフルーツの甘い香りが家の中を包む。

父に連れられ、物心ついた頃からキャンプをしていたという写風人さん。その歴は50年を超え、なかでも彼が送る“焚き火と薪ストーブのある暮らし”はアウトドア愛好家から一目置かれる。
「小さい頃、父親の影響で西部劇が好きになり、映画をよく観ていたんです。その中に、カウボーイが焚き火しながら野営するシーンがあって。それがすごくかっこよく感じたんですよね。焚き火が好きになったきっかけは、意外とそれがルーツだったりもするんです」

「そして焚き火の楽しさにハマっていくと、いつしか薪ストーブにも憧れるようになり……。40歳で写真スタジオを新設したとき、念願だった薪ストーブをそこのロビーに導入したんです」
遡ること20年以上も前のこと。当時、彼は父の代から続く写真スタジオを岐阜で営んでいた。学校の卒業アルバムや結婚式、成人式の前撮りなどを主な生業とする、いわば“街の写真屋”である。

では、そんな街の写真屋を営んでいた彼が地元・岐阜県を離れ、ここ長野・南信州へ移住することとなるきっかけは何だったのか。
「実は、私のブログを目にした薪ストーブのブランド『ファイヤーサイド』の社長から、“うちの薪ストーブのカタログ撮影をしてくれないか”と連絡があり……。それが駒ヶ根市発のブランドだったんです」

「カタログ撮影の度に、駒ヶ根市へ訪れるようになるわけですが、南アルプスと中央アルプスの景色に圧倒され、改めて自然の良さに気付づかされたんです。元々どこかに移住したいって気持ちがあったので、これは駒ヶ根市に移住するしかないな、と」

「家探しの条件は、焚き火もできて、薪ストーブも使える家。物件探しには3年かかりました。ここは僕だけの焚き火フィールド。煙を上げても誰にも迷惑をかけることなく、好きな時に好きな焚き火を愉しめます」

焚き火台を使わないオールドスタイルの焚き火を好む写風人さん。ここ最近、焚き火グッズのトレンドはキャンプ場に持ち運びしやすい“軽量かつコンパクト”なのだが、「僕はキャンプ場とか行かないので、ギア選びに携帯性とかは関係なく、どっちかというとガシガシ使えるヘビーデューティーなものが多いです。ケトルやダッチオーブンとかね」とタフなアイアン製品を愛用している。

「薪割り」が日課。

薪ストーブに使う薪も、焚き火に使う薪も、その全てを自身で作る。
「一年通して、薪ストーブを焚かないっていうのは8月ぐらい。夏も意外と、7月ぐらいまで梅雨っぽかったりするので、部屋の中を乾燥させるために結構焚きますよ。そこから一ヶ月空け、冷え始める9月頃からまた焚きはじめて……。このサイクルで薪を消費すると、ストーブ1台に対して平均4トンの薪が年間で必要なんです。うちは計3台を炊いているので、12トンの薪を消費してます」

「3トントラックで原木を運んでもらって。それをチェーンソーでカットして、斧で割って……。生活に必要な薪以外にも、仕事で焚き火や薪ストーブの撮影をするので、年がら年中薪割りをしてます。え、オフの日があったら何をしたいって? ん〜、何もやることがない時は、……やっぱり薪を(笑)」

“炎”は撮影の対象物としても面白い

パチパチと音をたてて爆ぜる薪。焚き火には癒し効果があるとされるが、写風人さんにとって炎の魅力とは。
「もちろん、見ていて癒されるとか、料理ができるとか色々あるんですけど、撮影の対象としてもものすごく面白くて。同じ形にならないじゃないですか? 焚き方によっても変わりますし、気温や湿度によっても全然違う」

「炎の一番美しい瞬間をおさえるため、カメラのシャッターは結構切りますよ。あとで整理するの大変なんですけどね……」
「ファイヤーサイド」のほか、焚き火グローブで有名なブランド「グリップスワニー」のオフィシャルカメラマンも務める写風人さん。また、アウトドアメディアでは自身の連載を持ち、ライターとしての顔も併せ持つ。

都会暮らしにはない危険と、安心感

森暮らしを始めて3年。大自然ゆえに苦労することはあるのだろうか。
「ほんとに自然が豊かですが、その分、草刈りは大変です。虫もやたらと多いですね。あと、朝起きら“ロープがぶら下がってる”と思ったら、それがマムシより10倍の毒を持つとされるヤマカガシっていうヘビで。今は、ロープを見るだけでドキッとしますね(笑)」

「横のつながりは田舎暮らしの方がやっぱ強いですよね。ここらへんでは、町内会のことを隣組って言うんですけど、その付き合いは濃厚です。行事ごともそうですし、野菜を桁違いにいただいたりとか(笑)」
田舎暮らしは、都会に住むのに比べて利便性は劣るかもしれないが、行事ごとの集まりなど、周囲の住人とのコミュニケーションがある分、人の温かみに触れ得ることができる。それも写風人さんが送る、南信州・森暮らしの魅力なのかもしれない。

今日も薪を割り、火を操る

暖を取るためだけの火ではなく、見て癒され、料理を作り、部屋を乾燥させたり……。生活のあらゆるところに浸透している、アナログな炎。写風人さんによれば、マッチ一本の火でひと冬を過ごすことも可能なんだそう。

傍から見れば少々偏ったようにもみえる、焚き火を偏愛する暮らし。だが、写風人さんにとっては好きなことが仕事につながり、生活そのものが好きなことで溢れる、毎日がエンターテインメントな日々。

いつまでも好奇心を忘れず、今日もまた彼は薪を割り、火を愛でる。

  • Photo/RYOSUKE YUASA
  • Text/GGGC
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