- 福富優樹(Homecomings/Gt.)
- ふくとみ・ゆうき|1991年、石川県出身。大学入学を機に京都に引っ越し、大学の仲間とHomecomingsを結成。2020年に東京に住まいを移し、翌2021年にメジャーデビュー。ギターを担当するほか、作詞も手掛ける。音楽はもちろん、映画や文学にも造詣が深く、なかでも映画に関しては「シアタールームの窓から」と題したコラム連載も持つほど。
- Instagram - @fukutomimurray
壁を覆うようなシェルフは“好き”の映し鏡。
福富さんは京都精華大学の仲間と共に結成した4ピースバンド、Homecomingsのギタリスト。2019年公開の映画『愛がなんだ』の主題歌として制作した楽曲『Cakes』が話題となり、2021年にメジャーデビュー。東京へと活動の拠点を移し、現在の住まいはご覧のとおり。壁際にセットされたシェルフには、ショップ顔負けにDVDやレコードが詰まっている。
「映画好きに拍車かかったのは、地元の石川から京都に引っ越してから。僕の地元はなかなかの田舎で、ミニシアターには縁がなくて。それが京都市内には、町中にいくつも独立系の映画館があるんです。特に大学卒業後は、映画館に通い詰めていましたね。作品を選ぶことはせず、レコードをディグるような感覚。そのとき上映されている映画との、一期一会を楽しむような」
ミュージシャンとして活動する彼だが、聞けば、自身の文化的ルーツは音楽よりも映画。映画館に通うことはなくとも、少年期には『ゴーストバスターズ』だったり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったり、VHSに録画したアメリカの80’sシネマを繰り返し観ていたという。
「内容の面白さはもちろん、その背景として映し出されるアメリカの景色や文化に惹かれたんだと思います。ひと言にまとめれば、海外への憧れをかき立てられた感じ。単館系の映画を観るようになってからも特に惹きつけられるのは、舞台となった土地の空気感を強く感じられる作品です。例えば、ブルックリンを舞台に撮影された『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』みたいに」
「ソファに腰掛けながら、テレビ画面に釘付けになる。これって『ザ・シンプソンズ』のオープニングにも描かれているように、アメリカのアニメやドラマ、映画にもお決まりのシーンですよね。我が家のソファも、そのイメージ。1日の締めくくりにソファで映画を観るのが日課です」
ちなみに福富さんの音楽的ルーツは、小学校高学年のころに初めて聴いたスピッツ。そこから少しずつ洋楽にも興味を持ち始め、Homecomingsの楽曲にもUSやUKのインディーテイストが漂う。そして彼が暮らす部屋もまた、自身が影響を受けた映画や音楽の映し鏡だ。
お気に入りのシーンがよみがえる、壁のメモ。
自身が影響を受けたカルチャーを浮き彫りにするような、福富さんの部屋。それを象徴するのが、仕事部屋兼ベッドルームの壁。彼が作詞にいそしむデスクに面して貼り付けられたメモたちも、イメージソースは映像作品だ。
「Netflixで配信されている『最高に素晴らしいこと』というドラマがあって、壁に貼り付けたメモは、ドラマに登場するフィンチという男の子の真似(笑)。でも、単なる真似事も意外と馬鹿にはできなくて。不意に思いついたフレーズだったり、走り描きしたイラストだったり、貼り付けたメモからアイデアが生まれることも少なくないんです」
壁のメモがアイデアの源泉であるように、福富さんの脳内にはあらゆるイメージソースが縦横無尽に駆け回る。部屋のあちこちにDVDやレコード、さらにはカセットテープに小説、漫画やポスターがディスプレイされ、作品のひとつひとつが立派なインテリアとして機能している。
「映画も音楽も文学も、僕のなかではすべてが地続き。映画をきっかけにサントラを購入したり、原作本を読んでみたり。反対に音楽や文学をきっかけに、未開拓だった映画を知ることもしばしばです。特に『ヴァージン・スーサイズ』や『ロスト・イン・トランスレーション』といったソフィア・コッポラの監督作品は、その象徴かもしれません」
少年期に観た映画をきっかけにカルチャーの虜となり、さまざまな文化を垣根なく愛する福富さんらしく、こちらの壁にレイアウトされたポスターやポストカードも種々雑多。アメリカのラッパーであるマック・ミラーと日本の漫画家である西村ツチカのポスター、さらにはベルギーの歴史的漫画『タンタンの冒険』のポスターが同居する。
文学もキャラクタートイも、ルーツは憧れの海外。
「小説や漫画も、サブスクのある映画や音楽も、お気に入りの作品は手元に置いておかないと気が済まなくて。この感覚が育まれたのも、少年期かもしれません。サブスクが一般化する前って、“友達にCDや本を貸せる奴=カルチャーに詳しい奴”という認識だったじゃないですか(笑)」
趣味にこだわりのある人なら深く共感するだろう、お気に入りのアイテムは、手元に置いておきたい所有欲。福富さんの所有欲は、本棚にディスプレイされたキャラクタートイからも見て取れる。
「ヴィンテージショップでビビッと来るアイテムを見つけると、ついつい手が伸びてしまいますね。なかでも『タンタンの冒険』と『セサミストリート』は、映画と同じくらいのマスターピース。社会に立ち向かう強さだったり、多様性の大切さだったり、大人になった今も大事なことを思い返させてくれる作品です」
「僕のルーツはアメリカの80’sシネマ。そこがすべての出発点だからでしょうか、本に関しても海外文学が好きなんです。古典の名作はもちろん、アメリカ発祥のYA(ヤングアダルト)小説もよく読みます。インディーミュージックに通じるような青臭さというか、心がヒリヒリするような感情の機微が詰まっていて」
本棚を見れば、その人が分かる。このフレーズを具現化したような福富さんの本棚。そこかしこに散りばめられたキャラクタートイの存在も相まって、福富さんが何に興味を持って育ち、今、何に興味があるのか、手に取るように分かる気がする。
もしamadana baseに住んだなら、ビデオショップさながらに。
少年期に魅了された映画を起点にあらゆるカルチャーに精通し、その“好き”を丸ごと投影したかのような住まいに暮らす福富さん。そんな彼が「amadana base produced by amadana」に住んだとしたら、いったい、どんな空間に仕上げるのだろうか…。
「これも僕のルーツが映画にあるからですよね。アメリカの80’sシネマに登場するような、大型のビデオショップを再現したくて。理想はアメリカのレンタルチェーン店『BLOCK BUSTER』のイメージ。だだっ広い空間に、VHSやDVDが詰まったラックがひたすら並んでいるような」
「それにお気に入りの本や漫画も、ショップ風にディスプレイしたくて。京都に住んでいたころに通い詰めた書店『誠光社』みたいにスペースの一番目立つ場所に本を平置きしたり、お店さながらに家の前に看板まで立てたりして。でも、あくまでも個人の住まいという矛盾を楽しめる家を実現できたら、なんだか面白いですよね」
「開放的な空間を、好きな作品たちで埋め尽くしたい。でも、お気に入りの映画を鑑賞するスペースに関しては、今の住まいのままで十分です。凝った音響システムなんていらず、ゆっくりソファに腰掛けながら映画を観ることが、ただただ心地いいから」
空間いっぱいに並んだVHSやDVDのラックも、平置きにディスプレイされた本も、そして欲張りすぎない映画鑑賞のスペースも、すべてが福富さんのルーツ。開放的かつ間取りのカスタマイズもフレキシブルな「amadana base produced by amadana」なら、自身の“好き”をより色濃く打ち出し、その“好き”を謳歌できる住まいになる。
- Photo/Chie Kushibiki
- Text/Kyoko Oya
- Illust/Daisketch
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