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F/CE.デザイナー山根 敏史|心に残る音楽と、それにまつわる品々の回想録。
ART & MUSIC 2022.02.22

F/CE.デザイナー山根 敏史|心に残る音楽と、それにまつわる品々の回想録。

F/CE.のデザイナーであり、バンド・toeのベーシストである山根敏史。作り手であり聴き手である彼が親しみ愛した音楽は、どんなものだろうか。音楽と想い出の品々に囲まれた空間を、その蜜月関係から紐解いていく。

INFORMATION
山根 敏史(デザイナー)
山根 敏史(デザイナー)
やまね・さとし|1975年、愛知県出身。モード学園卒業後、ファッションデザイナーとして大手アパレルメーカーで勤務し、2009年に独立。自身のレーベルをF/CE.を手掛けつつ、他ブランドのデザインやディレクションなどでも活躍。

初めてバンドを組んでから、音楽がライフスタイルの一部に。

中学2年生で友人らとバンドを結成したことを機にどんどん音楽へとのめり込んでいったという山根さん。今でこそ、ジャンルを問わずその日の気分に応じて幅広い楽曲を聴いているが、バンドを始めるきっかけとなったジャンルはハードコアなのだとか。「ファッションはもちろん、音楽への興味も膨らんでいった10代半ば。いわゆる王道の流行りの曲というよりは、もっとアンダーグラウンドな香りのする音楽が好きだったんですよね。当時、その感覚に近かったジャンルがハードコアでした。音楽性だけでなく、彼らのファッションやカルチャーも含めて、カッコ良さを感じて。もう20年以上も前に出会った音楽たちではあるのですが、好きな気持ちは変わらず、いまでも自宅や車、仕事部屋でも聴くことは多いですね」。

山根さんの仕事部屋には壁一面にUSMハラーシステムのキャビネットが設置され、ヴォックスの小型アンプとお気に入りのレコードたちが収納される。日常的に聴いているのはデジタル音源が主軸だが、好きなアーティストのアルバムは、ジャケットが大きい12インチのレコードで購入することがほとんど。部屋にはクレイマーのアルミネックのベースが置かれ、インテリアとしても充分な存在感を放つ。

そのほか収納には仕事に必要な資料だけでなく、旅先で購入した雑貨類など彼ならではのアイテムが並べられる。「F/CE.では毎シーズン、ひとつの国をテーマにコレクションを展開していて、その国を訪れるごとに現地のレコードショップで毎回、大量に買ってしまいますね。今はレコードにもMP3のダウンロードキーが付いているので実際に針を当てることは少なくなりましたが、音楽を流している間、ジャケットを飾ったりして楽しんでいます」。

山根敏史さんの心に残る音楽と、想い出の品々。

音楽とともにライフスタイルを楽しんできた山根さん。ときには音だけでなく後ろの演者をはじめとする音のディテールに聴き入ってしまうというお気に入りの音楽とそれにまつわる想い出のアイテムを紹介。

01.First Demo/Fugazi

バンドを始めるきっかけにもなったハードコアバンド・Fugazi(フガジ)。ワシントンDCを拠点にするレーベル、ディスコードレコード時代、1988年にリリースされたアルバム『ファーストデモ』は、山根さんが人生で最も影響を受けたアーティストなのだという。「ハードコアのジャンルの中で、いろいろなアーティストを聴いてきましたが、一番衝撃を受けたのがフガジ。音楽だけでなく彼らのファッションやライフスタイルがとにかくカッコ良かったんですよね。当時、ボクの周りはみんな聴いていました。10代の頃に出会って以来、いまでも定期的に聴きたくなるアルバムです」。

この曲にまつわるアイテムは、スケート、パンク、ヒップホップなど、アメリカのカウンターカルチャーを撮り続けてきた伝説的なフォトグラファーとして知られるグレンE.フリードマンが1994年に自費出版したアートブック『MY RULES』。「ハードコアを聴きながら、ショーツを穿いてスケートボードでよく遊んでいた頃を思い出します。この頃からアメリカンカルチャーへとどっぷりと浸かるようになって、徐々にファッションも彼らに影響されるようになっていきました」。

グレンE.フリードマンの初期の作品集である『Fuck You Heroes』と『Fuck You Too』の2種の作品集からなるベスト版で、掲載される約3分の1が未公開写真で構成されたアートブック。「この写真集の中にボクたちがよく聴いていたフガジの写真も多く収められていて、当時のリアルな日常のシーンが切り取られ、ど迫力で見られるのは嬉しいですね」。

02.War Pigs/BLACK SABBATH

オジー・オズボーンが在籍していたことでも知られるBLACK SABBATH(ブラック・サバス)は、1960年代から2017年まで活動していたイギリス出身のロックバンド。のちのミュージックシーンに大きな影響を与えた伝説のバンドとしても知られている。「10代の頃はアメリカンカルチャーの影響を受けましたが、音楽は今も昔も国やジャンルを問わずにいろいろ聞いてます。ジャズだったりジャンル問わず、いろんな音楽を聴いていますね。その中でも特にブラック・サバスはtoeでカバーし、フジロックでも披露したことのある思い入れのあるアーティストです」。

“OLD NEW SCHOOL”をテーマとしたF/CE.の2018年コレクションで、東京コレクションに初参戦した際、ノベルティとして配ったカセットテープ。toeがブラック・サバスの『War Pigs』をカバーし、ヴォーカルにコトリンゴ氏を迎えたコレクションのための限定音源は貴重だ。「コレクションテーマが、OLD NEW SCHOOLということで、カセットテープとしても聴くことはできますが、MP3の音源もダウンロードできるようにすることでテーマを表現しました」。

カセットテープのパッケージデザインは、F/CE.でもロゴやタグなどをデザインした、アートディレクター平林奈緒美氏が担当。細かなデザインも気に入っており、2018年のコレクションとともに想い出のアイテムなのだとか。「ブランドとして、初めて東京コレクションに出展することになった思い出と、toeとして『War Pigs』をカバーした2つの思い出が重なっている大切なアイテムのひとつです」。

03.The Catastrophist/TORTOISE

シカゴを拠点とし、ポストロックシーンを牽引するバンド・TORTOISE(トータス)。昔から憧れていたという彼らのこのアルバムは、2015年の発売ながら、現在もお気に入りの1枚となっている。「ほんとにカッコイイんですよね。メインストリームじゃないというか、わりと自分たちの音楽とリンクするんですよね。アルバム自体そのほかにもあるんですけど、この1枚は外せないですね。インストの文化みたいなところも共感できて、とてもリスペクトしています」。

本作に限らず、山根さん自身が仕事場や自宅など、お気に入りの空間で音楽を聴く時は、『ル・ラボ』のキャンドルをかたわらに置くという。「自分が過ごす空間の中で音楽という要素はすごく重要なんですけど、流れている音と香りのバランスを大事にしています。オフィスではもちろん、自宅でもキャンドルを愛用しています」。

数あるアロマキャンドルの中でもリピートしているル・ラボのキャンドル、くにサンタルの香りがお気に入りなのだとか。「サンタル以外でもローズなども持っていますし、また、キャンドルだけでなくフレグランスやハンドクリームなど、身の回りのものはル・ラボの同じアイテムで揃えていますね。曲に合わせて香りを選ぶというよりは、お気に入りの曲と香りを同時に楽しむことが好きなんです」。

山根さんの日常に欠かすことができない、音との関係。

「自分のデスクに座る時は、ほぼ毎日何かしら必ず音楽を流しています」。昔ほどじっくりと音楽に触れることが少なくなるほどに、最近は多忙を極めるという山根さん。聴き始めると細かなディテールまで聴き入ってしまうため、もっぱらBGMとして流す程度にしているのだとか。「仕事のときに聴く音楽は特に決めていません。自分の中で波こそありますが、比較的、なんでも聴くようにしています。それこそいま気になっているのはブリティッシュ。例えばビートルズとか。ハードコアを聴き込んでいた当時は、好きなポイントを見つけられなかったんですよね。今後は、もう少しじっくりと音楽に触れる時間を作ることができたらなと思っています」。

音楽はもちろん、アウトドア、ファッション、インテリアなど、多趣味でも知られる彼の部屋は、計算されなくともセンス良くまとまっている。何気なく置かれたジャン・ヌレのチェアやUSMハラーシステムのキャビネットなど、空間に合わせた家具選びもセンスの良さが表れている。「家具などインテリアも好きですね。子供がいる自宅よりは、オフィスの方が自分の好きなように空間を仕上げていると思います」。

音楽を通してファッションやカルチャーを深く掘り下げていった10代半ば。現在でもその方程式は変わらず、40代へと歳を重ねた今でも山根さんの中で根付いている。「いずれちゃんとしたプレイヤーをこの部屋に置きたいと思っているんですけどね。ただ、音楽に集中し過ぎると、仕事が手につかなくなるほど、ディテールまで聴き込んでしまうので、ライトに聴くことができる今くらいがちょうど良いのかもしれないですね」。衣食住と変わらないほど大切な音楽。空間のいたるところに適宜レイアウトされた音楽にまつわるピースたちが、それを物語っているのだろう。 山根さんにとって、音楽はライフスタイルの一部であり、日常に溶け込んでいるもの。それがミュージシャンとしての一面を持つ、彼の自然な姿なのだ。 

  • Photo/Seiji Sawada
  • Text/Tamaki Itakura
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