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自由な感性でつくった、さまざまなものたちに囲まれた家。
ART & MUSIC 2022.02.08

自由な感性でつくった、さまざまなものたちに囲まれた家。

石井佳苗/スタイリスト

豊かな暮らしの価値観やスタイルは人それぞれですが、素敵な暮らしをしている人に共通するのは、ものや出来事に対する、日々の丁寧なふるまい。そんな方々の暮らし方や働き方、部屋づくりのこだわりから、いま気になっているものまで。リアルな言葉と美しい写真で綴る、暮らしのヒントやアイデアをお届けします。

INFORMATION
石井佳苗(スタイリスト)
石井佳苗(スタイリスト)
いしい・かなえ|雑誌や書籍、広告の分野などのインテリアスタイリングで活躍する。DIYでセルフリノベーションした新居づくりのプロセスは書籍化もされ、その暮らしも注目を集める。

その等身大でリアルなインテリアスタイリングで人気を誇るスタイリストの石井佳苗さん。窓から心地よい潮風がそよぐ海沿いに建つマンションの一室には、こだわりのインテリアがところせましと並んでいる。毎日使うものを大切に集めているという石井さんの暮らしには、物への愛情がそこかしこに感じられる。自ら手を動かすDIY好きとしても知られ、今回お邪魔したご自宅も、専門家の友人たちと一緒に自由にリノベーションをしたのだとか。“社員”と愛情を込めて石井さんが呼ぶ愛猫3匹と共に暮らすご自宅でお話を伺いました。

雑誌で見たインテリアに憧れて。

ー お仕事について教えてください。

雑誌や書籍を中心にインテリアスタイリストとして、生活提案のスタイリングを主にしています。背景になるカッコいいインテリアのスタイリングよりも、暮らしの役に立つスタイリングをしたいと思いながらお仕事をさせていただいています。

ー インテリアのお仕事を始めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

インテリアが好きで、20代の頃から雑誌などのインテリアスタイリングをみては、その世界観に憧れをもっていました。だけど80年代当時はインテリアに関する本も、お店も限られたものしかなくって。今のようにインターネットも普及していませんでしたし、雑誌やお店、ギャラリーに足を運ばなければ、素敵なインテリアに出合うことはできませんでした。雑誌でF.O.B COOPの益永みつ枝さんやDEE'S HALLの土器さんのインテリアを見て、こういう暮らしがしたいなあ……と思ったのがインテリアの仕事をするきっかけでした。

ー お仕事も、もともとインテリア関係だったのですか。

最初はアパレルの仕事をしていました。結婚、出産を経て、インテリアに興味を持つようになり、いつか仕事にしたいなと、自分なりにインテリアを工夫しながら暮らしていました。子どもが3歳になった頃、次に仕事をするならインテリアの仕事をしたいと思っていて、ご縁がありカッシーナに就職。そこで10年ほど働きました。

ー カッシーナではどのようなお仕事をされていたのですか。

イタリアのブランドアレッシィの青山のお店の立ち上げに関わったり、ショップのディスプレイやカタログ作成などVMDに携わったりしていました。会社勤めの時には、建築家やデザイナーと触れ合う機会も多くいただき、そこでデザインがくらしを豊かにすることを学びました。

ー その頃、自宅ではどのようなインテリアで暮らしていたのでしょうか。

哲学的な背景をもちしっかり作られた家具も好きでしたが、骨董市や小さなギャラリーを巡って気になったものをコツコツと集めては、部屋に飾って楽しんでいました。そのうち世の中の流れで工芸の若い作家さんの作品もギャラリーなどでも手に入るようになり、そういったものを取り入れながら、ますますインテリアが好きになっていきました。

ー その後インテリアの仕事に?

もっと自由にインテリアを楽しみたいと思ったこともあり、会社を辞めてフリーのインテリアスタイリストになりました。でも、最初はスタイリストになるつもりは全然なかったんですよ(笑)。

ー どんなきっかけがあったのでしょうか。

紹介された編集者の方が家に遊びにいらして、今度本を出すからインテリアのスタイリングをしてほしいといわれたことがきっかけでした。それまでスタイリストアシスタントの経験もなかったのですが、知らないうちにインテリアスタイリストになっていました(笑)。そこからいろいろとお仕事をさせていただくようになりました。

ー インテリアはどのようなものがお好きですか。

もともとデザイナーものが大好きで、会社を辞める時の記念にと手に入れた、ジオ・ポンティの「スーパーレジェーラ」という椅子は大のお気に入りです。今から思っても会社勤めをしていた10年間は本当に大きくて、モダンデザインからアノニマスなものまで、いろんなものをミックスするインテリアの感覚を養わせていただきました。

ー インテリアスタイリングをする時、どのようなことを大切にしているのでしょうか ?

自分で作って来た価値観ではあるのですが、どのようなお仕事をさせていただく時にも、自分の”生活”をベースにしています。

ー ご自宅の取材を受けることも多いですよね。

実際に師匠と呼べる人がいない代わりに、かつて国内外の雑誌などで目にした素敵な暮らしをされている方のインテリアには本当に影響を受けていて、そんな自分の経験に対する恩返しの気持ちで、取材を受けるようにしています。

ー 物の置き方も石井さんらしさが出ていらっしゃいますね。

たくさん物があっても、たとえば、白っぽいもの、土っぽいもの、その他というように、色に統一感をもって収納することでまとまりを出しています。あとは、コップならコップ、ポットならポットと、大小関係なく同じようなもので空間をつくることでもまとまり感を出せますよ。

物が好きという思い。

ー インテリアを目につく場所に出すのはどういう意図があるのでしょうか。

ひとつひとつの物に思い入れがあるので、しまい込まずに、いつでも見られる状態にしています。見ていることでそれに出合った時の光景が思い出されたり、ホッと一息つけたり。それと私自身、物が好きなんですね。でも手元がゆるくてよく壊したりするんですけどね(笑)。

ー 壊れてしまったらどうするのですか。

猫ちゃん3匹と暮らしていますので、時々、物が壊れることはありますが、焼物であればできるだけ金継ぎをして直しています。でも以前、大好きな作家さんである唐津の岡晋吾さんの器をお借りして、欠けさせてしまったことがあるんですね。その時、それを扱う問屋さんに、「焼物は割れるもんだ。だから気にしないで。」というお話を伺って。最初はびっくりしましたが、産地の人がそう言うのだからと、自由な感覚になりました。それ以来壊れてもあまり気にせずに、次の新しいものを買える循環の機会とポジティブに思えるようになりました。そういったこともあって、ものに対してはおおらかに接するようにしていますね。

ー 猫たちとの暮らしはいかがですか。

友人には猫たちと暮らしていると、「こんなにたくさんのものがあって大丈夫なの?」といわれることがあります。でも、猫はしなやかな身のこなしで物を避けて移動してくれるので全然平気なんですよ。猫が物を落として壊したりする時って故意にやるんですね。逆にいえば猫は自分がターゲットと思ったもの以外には興味がありません。だから物との向き合い方としては、例え猫と暮らしていても、まったく変わることがないんです。ただ、猫たちにとって安全な暮らしには気遣いをしていますよ。玄関の廊下にあるフェンスの幅は、一番小さなメグちゃんの頭の大きさに合わせて作っているんですよ。

DIYで好みに合わせて空間をカスタマイズ。

ー DIYをするようになったきっかけは。

気がついたら自分で作るようになっていたんですよね。母が洋裁が得意でしたので、大学に入るくらいまで着ていた服のほとんどは母が作ってくれたものでした。父も東京の下町でものづくりをしていて、生粋の職人。家のペンキを塗り直したり屋根を直したり、小さい頃父とはよく自転車のパンク修理を一緒にしていましたね。

ー ご両親からもDIYのDNAを受け継いでいるのですね。ご自宅もご自身が中心となり手がけたそうですが。

自由に付け加えられるシンプルな箱づくりを目指しました。物が大好きなので、まずはそれらの物が映える空間を作ろうと思いました。こだわった部分といえば、石のタイルとフローリングを突き合わせで張ったり、寝室の床に古材を使ったり、床にこだわったことです。あとは天井を抜いて広くしました。いくつかのドアを移設したり、ル・コルビュジエのサヴォア邸にあるキッチンカウンターにインスピレーションを得たキッチンのシンク&作業台も、専門家にアドバイスを受けて、こだわって作ったもののひとつなんですよ。

ー 床や間取り、猫専用の出入り口など、石井さんならではのこだわりを随所に感じられますね。

とにかく一度自分の家のDIYしようと思っていたことが大きいですね。DIYなら、一度シンプルな箱を作ってしまえば、編集する家として、あとからはなんでも付け足せるんです。壁の色や素材を変えたり、それは今までインテリアの仕事やDIYをやってきた中で身に付いたことを、気軽な気持ちでやりました。

ー 石井さんにとってDIYとは。

海外のドラマや映画を見ても、女性がよくDIYしているシーンがありますよね。あんな風に、女性にもぜひ工具を使ってもらいたいんです。お料理もソーイングもDIYですし、普段バリバリと仕事をしていても、そんなふうに暮らしと向き合ってほしいなぁと思います。

ー でも、実際に生活を始めてみないとその家のことってみえてこない部分ってありますよね。

私が生活をしていく中で、ここにフックが欲しいと思った時に自分で付けたくて。その方がその人ならではの暮らしにフィットした空間が作れると思っています。だから初心者向けに、新しくお家を買う時には「あとで自分で付けてねセット」があれば最高ですね(笑)。家にはそれぐらいの自由度があっていいと思うんです。ポスターやアートも額に入れて床置きをする人が多いですが、思い切って壁に掛けた方が作品もよく見えますし足元がスッキリして、逆に部屋が広く見える効果もあるので、壁をいろいろと活用するといいですよ。

石井さんにとっての丁寧な暮らしとは。

ー 日常と丁寧に向き合っていると感じるのは、どのような時でしょうか。

結構いい加減なんですよね(笑)。そういった意味では、使ったものは元あった場所に戻すということでしょうか。棚や机の上など元あった場所に戻すこともそうですが、キッチンやリビングなど、部屋の中にいくつかトレイを置いていて、そこにまとめて置くようにしています。置く場所を作ってあげると片付ける習慣がつくんです。私自身きちっとした収納というのが苦手なので、とりあえず置く場所を作ってそこに置くと自然と整頓した感じがでると思いますよ。それと最近買った壁際にある奥行きの浅い細長いデスクは、仕事机に使っています。これが来る前はリビング&ダイニングにある大きなテーブルで食事も仕事もこなしていましたが、この机が家に来たことでだいぶ整理整頓ができるようになりました。やはりきちんとした物の居場所を作ってあげることは大切ですね。

ー グリーンも丁寧に飾られていて、猫ちゃんたちと共にお部屋に動く要素が加わり、それがとても心地よい雰囲気を作り出していますね。

今年に入ってベランダに大きな植物を置くようになったのですが、それをチョキンと切って部屋の中に飾っているだけ。でもそれだけで緑を味わうことができるようになっていいですね。大きな植物を置いたことで、部屋の中でも風も感じられるようになりました。

ー 日々の暮らしで大切にしていることを教えてください。

毎朝コーヒーを淹れています。それと朝起きたら、その日の天候に関わらず、まずは窓をあけて、新鮮な風を部屋に取り入れていて、それを儀式のように行っています。食事もゆっくり家にいるときには、一品はこだわって食事を作るようにしています。それと3匹の猫たちと戯れることが、忙しい日々の中で無心になれる大切な時間になっていますね。

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