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理想の暮らしを叶えた、四季を感じる住環境。
OUTDOOR 2023.04.10

理想の暮らしを叶えた、四季を感じる住環境。

シンプルで使いやすく、洗練されたアウトドアギアを展開する〈WINDY AND RAINY〉の代表である木下さん。長年住んだ東京を離れ、2年ほど前に長野県へ移住した。自身が培ったアウトドアの経験やアイデアを活かし、自然と共存して生きる。そんな八ヶ岳での暮らしをのぞかせてもらった。

INFORMATION
木下さん(〈WINDY AND RAINY〉代表)
木下さん(〈WINDY AND RAINY〉代表)
キノシタ|26歳の時にデザイン会社を立ち上げ、2017年東京にてガレージブランド〈WINDY AND RAINY〉をスタート。

移住を決意した、自宅からの景観。

自身が手がけるガレージブランド〈WINDY AND RAINY〉誕生のきっかけを、木下さんはこう語る。
「田舎の出身だし、もともと自然が好きだったんでしょうね。以前、山梨県の道志村によくキャンプに行っていたのですが、山間部で一区画が小さく、いいサイズのギアがなかなか見つからない。それなら合うギアを自分で作ってしまおうと考えたのがきっかけです。初めは自分のために作っていましたが、周囲からも欲しいという要望が増え始め、ブランド設立に至りました」

家族で使うものやブランドの試作品…アウトドア用品が膨大な量になり、倉庫を自宅とは別で借りるほど。また年間70泊、毎週末と言っていいほどキャンプしていたこともあり、東京で暮らすメリットが少なくなってきてしまった。そんな理由から、2年ほど前に移住を決意。

家の下部には川が流れているが、建築基準法や河川法により、現在の景観がずっと保たれるというのもこの地に移住する大きな決め手だった。
「家の対岸にある土地も購入し、夏にはキャンプ場をオープンする予定なんです。アトリエも併設し、そこでは商品の販売もしようと考えています」

伐採や抜根も、自らおこなう。かなりの重労働だが、それらもすべて「楽しい」と木下さんは言う。

ブランドにとっても、自然が近いことはいい作用を及ぼすという。
「アウトドアのブランドをやっているので、より自然に近いところに身を置いた方が、身近だし説得力も上がるんじゃないかな。それによって生み出すものも変わってくると思っているんです」

〈WINDY AND RAINY〉のギアは、モノトーン系が多い。なるべくウッド系のものは出さないというのがモットーだ。
「たとえば美術館はコンクリートでできているけれど、自然との調和が取れていると思うんです。無機質な素材でも、バランスがいい。そこでかっこよさを追求する先にできあがったのが、うちのキャンプギアです」

木下さんの自宅もまさに、アウトドアから得た知識やアイデアがそこかしこに活かされている。異なる素材やブランド、家具が絶妙なバランスで調和し、モダンな居心地のよさを生み出している。

土間から見える借景が、空間に華を添える。

玄関をあけるとすぐ、土間から続く打ち合わせスペースがある。大きくとられた窓からは、八ヶ岳の景色が広がる。額縁のように窓から切り取った借景が、まるでひとつの絵画のように四季折々で様々な表情を見せるそう。
「家の中にいても外を感じられるようにしたいというのは、初めから決めていました」

スクリーンを下ろせばプロジェクターを投影できるようにしているので、休日はお子さんと一緒にゲームで遊ぶことも楽しみのひとつ。椅子は29歳のときに購入した〈カッシーナ〉。

コミュニケーションの中心になるLDKには、デザイナー家具を。

木下さん一家の憩いの場であるLDK。キッチンのライトは〈フリッツ・ハンセン〉、リビングのライトは〈ルイスポールセン〉。椅子は東京駅でも使用されている〈マジス〉のチェアワンと、様々なデザイナー家具が融合している。

一番のこだわりはベルギーのBEAL社が開発した薄塗りの鉱物性左官塗材〈モールテックス〉を採用したオーダーメイドのダイニングテーブル。耐久性、防水性に加え、柔軟性やデザイン性を兼ね備えた塗材で、真ん中には奥さまが好きなブランド〈ミナ・ペルホネン〉のタイルが施されている。

キッチンの床を一段下げることで、キッチンに立つ人とテーブル前に腰かける人の目線の高さが合う仕様に。
「家族や友人と食卓を囲むときに、お互いの表情がわかるというのは、重要だと思うんですよね」

好きなものに囲まれた場所で、アイデアを刺激。

二階に設けられた作業スペースでは、ブランドの商品デザインなどをおこなう。「自然を見ながら作業したかったんです」と話すように、ずっとモニターと向き合っていても、少し目線を外せば緑が広がる。

作業の合間には、大充実のオーディオシステムで、昔からの趣味である音楽を聴いてリラックス。スピーカーは、1980年代にアメリカから輸入したものを父親から譲り受けた。
「近隣とは距離が離れているので、大音量で音楽を流しても大丈夫。ダンスからロックまで、ジャンルレスに幅広く愛聴しています」

DIYで刷新し続ける、収納スペース。

納戸には膨大な数の靴とキャンプギアが収納されている。天井高もあり、ロフトも設けているため、整然と収納が可能。
「好きなものが決まっているので、コンセプトが明確なものであればいくつ買ってもいいなと思っています。テントは20個までは数えていたけれど、途中で数えなくなってしったので、今いくつあるのかわかりませんね」と、木下さんは笑う。

材料と在庫を収納するストックルームは作業場を併設。試作をおこないつつ、タープなどの布製品はすべてここで制作しているそう。物が多くなりがちなペースだが、時間を見つけてはDIYで改造しながら都度、収納容量を増やしている。

季節の移り変わりを感じられる、理想の住まい。

広いウッドデッキでは、折りたたみのチェアを置いてコーヒーを飲んだり、ランタンをともしたり。ハンモックは椅子がわりに使用。大人も子どもも座ることができる。
「夏場は風呂上がりに外に出たり、窓を開けっ放しにして風を通します。標高1000メートルを越えると、蚊がほぼいないので快適なんですよ。涼しくて、時々寒いくらいです(笑)」

野生動物との共存も、都会では感じ得なかったことだそう。
「夏は一面の緑、秋はオレンジ色が広がる。四季の移り変わりを感じられるのも、この場所に自宅を設けたからこそ。キツツキやアオサギの鳴き声も聞こえます」

「東京にいるときは、昼まで寝ていることもざらにありましたが、今では自然と朝日とともに起きるようになりましたね。夕焼けがきれいだと、翌日よく晴れるんです」

周りには馴染みの土地と四季を感じられる景色。それに、趣味と仕事が暮らしとうまく調和して、木下さんは理想の住まいを作り上げている。

  • Photo/Takuroh Toyama
  • Text/Shoko Matsumoto
LL MAGAZINE