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吹き抜けリビングと子ども部屋。ゆるくつなげて、心地よく。
KIDS & PET 2023.10.10

吹き抜けリビングと子ども部屋。ゆるくつなげて、心地よく。

東京の湾岸エリアで生まれ育ったジュエリーデザイナーの木村朱里さん。ご両親が神奈川県横須賀市との二拠点生活を始めたことで地域の魅力に取り込まれ、「気づいたら家が建っちゃった」と笑顔で語る。独自のセンスが発揮された家は、親子関係やペットとの暮らしにも、心地いい変化をもたらした。

INFORMATION
木村 朱里さん(PALA Jewelryデザイナー)
木村 朱里さん(PALA Jewelryデザイナー)
きむら・しゅり|独学で彫金を学び、2012年自身のブランド「PALA」を立ち上げる。現在銀座に「House of Pala」として直営店&アトリエを構える。娘とパートナー、ペットたちと横須賀でにぎやかに暮らす。

吹き抜けLDKがつなぐ、子どもとのちょうどいい距離。

リビングに足を踏み入れると感じる開放感。高窓からの光は明るく、カラフルな雑貨や植物がひしめいていても、不思議と落ち着ける。ジュエリーデザイナーの木村さんが家族と暮らす家は、自ら図面を引いたというこだわりの空間だ。

「最初は家を建てようなんて思っていなくて。でも娘も大きくなって都内の賃貸では狭くなってきたし、犬も飼いたいし、アトリエも欲しい…全部の理想を叶えるには、もう戸建を建てちゃおう!となって」

建築家や大工さんとコミュニケーションを重ねながら、壁も床もよくある既製品以外の素材を自ら選定。

「キッチンの真上、リビングからもコミュニケーションを取れる位置にキッズスペースを作りました。いつでも気配を感じられて安心できるけど、高い位置にあるのでお互いに視線を気にせず好きなことに没頭できます。自立に向けての一歩かな。あとはリビングからおもちゃなどのごちゃごちゃが見えないのが、結果的に大正解(笑)」

愛娘のオリビアちゃんが小学校に入った今は、そんなべったりしすぎない距離感がちょうどいいと話す。オリビアちゃんも、今の住まいがお気に入りの様子。

自分専用の居場所で、子どもの自発性が育つ。

「家を建てる前は、都内のマンションに住んでいました。ごちゃごちゃするのが嫌で子どものおもちゃは見えないように収納していたから彼女専用のスペースもなくて。その頃の口癖が、『ママ、何したらいいの?』だったんですよ」

それが現在の家に馴染んでからは一変。自ら進んで絵を描いたり、楽器を演奏したりと、自由に遊ぶようになったという。

この日もオリビアちゃんは、コックさんの格好に着替えてレストランごっこでもてなしてくれた。レストランの看板やおもちゃのケーキセットも自作で、クリエイターのお母さん譲りの出来栄え。

「2階から“oliviaレストラン”の招待状がひらひら降ってくることも(笑)。自分のスペースができてから、もう『何したらいい?』は言わなくなりましたね。娘もインテリアに興味が出てきたみたいで、昨日も一緒にラグを買いに行ったし、自分で掃除をがんばってしてくれるようになりました」

そもそも、都内の湾岸エリアで生まれ育った木村さんが同じ“海”の街でもまったく風情の異なる横須賀を選んだのは、ご両親がつないだ縁だったそう。

「15年前くらいに両親が別拠点として浦賀にマンションを買ったんです。週末遊びに行くうちに、横須賀の魅力を知って。葉山や逗子とは違って地味だけど、海も山もあるし、野菜も魚もとびきりおいしい。何せ、人がいいんですよね」

川で遊んで山に登ったり、その足で海へ出て休んだりと自然に囲まれた場所。家族での移住にはぴったりだったという。

木村さんにとっては子どもだけでなく、ペットも大切な家族。この家の引き渡しと同時に迎え入れたのが、フレンチブルドックのダーラちゃん。もともと飼っていたフトアゴヒゲトカゲのジャックジャックちゃんとも仲良し。そんな彼女たちのためにこだわったのが“床”だ。

「我が家は壁や天井が木なので、木材と相性のいい素材を探していました。これはマーモリウムという天然素材からできていて、ダンススタジオや電車の床など使われているんです。消臭・抗菌効果もあって掃除もしやすく、とてもおすすめ」

ペットも床でのびのび過ごす木村家にとって、この床のチョイスはベストだったという。

壁一面、タイルを貼った植物のためだけのスペース。

リビングの壁一面には、木村さんの大好きな植物たちがずらり。大ぶりで野生味のあるグリーンは特別な熱帯植物かと思いきや、その多くは“胡蝶蘭”だという。 

「よくお祝いで胡蝶蘭を贈ることがありますが、あれって飾られた後はほとんど捨てられてしまうんです。それはかわいそうだと思って、趣味でランをレスキューする活動をしています。古道具屋さんで見つけたオブジェなどに着生させたり、吊るしたり」

よく知られる胡蝶蘭とはひと味違った、エキゾチックな魅力を開花させている木村家のラン。そのままでは飾りにくい胡蝶蘭も、手を加えることでインテリアに馴染ませている。

「入れ物に沿って這うように伸びる根っこが魅力的なんですよね」

たくさんの植物はこの家に引っ越してから増えたものと思いきや、都内のマンションにいたときから植物があふれていたのだとか。

「まるでジャングルみたいでした(笑)。家をせっかく建てるならと、壁の一面をタイル張りにして思い切り霧吹きで水をあげられるように。ダクトレールで上から吊るせるようにして、サーキュレーターも設置。マーモリウムの床も水に強いから安心です」

アクセントカラーで楽しむ、パーソナルなスペース。

自宅には、ジュエリーデザイナーである木村さんのアトリエスペースもある。壁は、この家でアクセントカラーになっているパープル。週に1〜2回程度銀座のショップ兼アトリエに通う以外は、ここにこもっていることも多い。

「このアトリエ部屋をはじめ、家のいたるところにアクセント色でパープルの壁を使っています。バスルームなどにも自分の好きなパープルを使って、心地よいように」

スペースによって色や素材が効果的に使われている木村家。例えばキッチンは、グリーン色のタイルと淡いパープル色の壁を組み合わせている。

「インテリアの植物と同じように、自然由来のグリーンで。我が家は壁や天井などの大部分はウッドで、そこにパープルのアクセントを効かせています。モノがたくさんあって一見ごちゃごちゃに見えるけど、実は家づくりに使っている色は限定してまとめています」

これからも、住みながら家を育てる。

木村さんの家づくりは“未完成”なのだという。

「使い勝手や家族の成長によってレイアウトを変えたいと思っています。この家に住み始めてからは雨で出かけられない日も、親子で模様替えをしたり、DIYするのが楽しみになりました」

次したいのは、デッキ作り。リビングからひと続きになるようにデッキを張って、外でBBQをするのが目標だという。「家族や友達とワイワイ集まれたら楽しいだろうなと夢見ています」

理想に合わせて少しずつ成長していく家。それに合わせて家族の楽しみも広がっていきそうだ。

  • Photo/Dai Yamamoto
  • Text/Miho Arima
LL MAGAZINE