観葉植物が部屋を埋め尽くす。手作りの温かみを感じるDIY空間。
賃貸物件でありながら、快適で居心地の良い空間をDIYによって作り上げたフォトグラファーの有泉さん。緑豊かな観葉植物や好きが詰まった手作りの雑貨や家具たちで埋め尽くされた空間は、こだわりと温かみに囲まれた住まいだった。
- 有泉 伸一郎(フォトグラファー)
- ありいずみ・しんいちろう|1978年生まれ、山梨県出身。2005年より写真家の北島明氏に師事し、2009年に独立。雑誌『BRUTUS』や『Number』、『SWITCH』、『GINZA』などを中心に、大手企業のwebサイトやカタログ、書籍、著名なミュージシャンのCDジャケットの撮影などを数多く手掛ける。
- Instagram - @shinichiro_ariizumi
愛着を持って育てることを重視した、植物との関わり方。
10年前に移り住んだという現在の有泉さんのお住まい。その広々としたリビングルームに、種類のさまざまな観葉植物がレイアウトされている。珍奇な品種や人気の植物を選ぶよりも、ホームセンターなどに出向き、苗から育てていく。そうした愛着を持つことこそ有泉さんらしいこだわりのあり方だ。
「サボテンやコウモリランなどは近くのホームセンターで購入したモノが多く、最初はまだ小さい苗だった植物がほとんど。育てながら、レイアウトや配置を変えることも多くて、季節によっては日当たりなどを考慮してベランダに出す植物もあり、今の時期だとベランダがジャングルみたいになっています(笑)」
有泉さんにとってのインテリアの根幹となるDIYの精神。
植物と同様に、有泉さんの部屋のインテリアでまず目を引くのが、自作した雑貨や家具の数々。さまざまなデザインやグラフィックが施された植物の鉢カバーは、いずれも有泉さん自身の手作りによるものだそう。
「鉢って普通に買うと高くて似たようなデザインが多かったりするので、それなら節約も兼ねて自分の好きなデザインのカバーを作ればいいかと思ったのが始まりです。好きな写真やアートワークを木箱にプリントしただけですが、印象もガラッと変わりますよね」
鉢カバー以外にも、有泉さんならではのアイデアによるDIY雑貨がリビング空間には所狭しと並べられている。
「例えば、蛍光灯のカバーを利用してドライフラワーを吊るせるようにしたり、昔にDJをしていた時から愛用しているターンテーブルのセットもDIYで台を作ったり、お金をかけなくても楽しめるのでおすすめです」
さらに、目を引くのがさまざまなアート作品や写真が至るスペースに飾られている点。有泉さんが自身の仕事やクリエイションに大きな影響を与えた写真家、好きな画家の作品が多いそう。そしてそれらの額縁やディスプレイケースは、もちろん自身の手作りなのだというから驚きだ。
「今飾っているモノは、気軽に買える作品ばかりではないので、大切にしています。せっかくなら自分の好きなようにデコレーションしたいなと思って、額縁やディスプレイケースも手作りしています。部屋の雰囲気とも合わせられるし、何よりDIYで自分好みにアレンジすることで、気分が全然違うんですよね」
仕事部屋にも散りばめられた、有泉さんの“偏愛”たち。
リビングスペースとは別の部屋に構えられた有泉さんのワークスペースには、より偏愛を感じる作品がたくさん飾られている。
「リビングに飾りきれない雑貨類は基本的に僕の仕事部屋に置いているのですが、仕事でのインスピレーションになることはもちろん、こうした好きなモノに囲まれていることで、インテリアの参考となるアイデアも生まれることがあるんです」
有泉さんのライフスタイルに欠かせない観葉植物やDIYによってアレンジされたアート作品が、仕事で使用する機材や備品と溶け込むように置かれたワークスペースは、まさに有泉さんの偏愛やキャラクターが詰まった空間と言える。
さらに大切な家族でもある愛猫が気兼ねなく過ごせるよう、整頓しすぎずに雑多にしている点も心地良く暮らせるインテリアのポイントかもしれない。「猫と暮らしていると、どうしてもインテリアでケアしないといけない部分が出てきてしまうと思うんですが、デスク下のPC機器の上など意外なところでくつろいだりするので。あえてモノを置いておくのも猫にとっては居心地が良さそうですね」
等身大で居心地の良い植物とDIYにあふれた空間の好例。
有泉さんの自宅には、背伸びをして繕う精神は一切なく、観葉植物や雑貨や家具の選び方もこだわりととらえることで、自分らしさを自然と表現した空間に仕上がっている。ないモノは作り、お金に依存せずに手掛けることで本質的な健やかさや居心地の良さを体感できるのかもしれない。愛着のあるインテリアだからこそ、偏愛できる。そんな想いが詰まった空間は、きっと自分らしい住空間を求める人たちの良い参考となるはずだ。
- Photo/Hisanori Suzuki
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