- 守田もも/ひな(HER NEON 代表)
- もりた・もも/ひな|アパレルブランド「HER NEON」を主宰する双子姉妹。友人にオーダーメイドのスマホケースを作成したことをきっかけにブランドをスタート。これまでに東京、大阪などの都心でシーズンごとにポップアップ、「FREAK'S STORE」とのコラボアイテムなども展開している。
- Instagram - @herneon_official
ブランドが予想外に急成長。急遽始まった、双子姉妹の2人暮らし。
工業地帯でありながら自然豊かな神奈川県鶴見区。悠々と流れる鶴見川の土手から徒歩数分の場所にあるマンションで、守田ももさん・ひなさん姉妹は2人暮らしを送っている。同じ神奈川県内の実家を出て約3年。この場所に住むことになったのは、2人が運営するブランド「HER NEON」の急成長がきっかけだった。
「HER NEON」が立ち上がったのは2019年のこと。その約半年後、ある有名女性誌に特集されたことで認知度が一気に伸び、SNSのフォロワー数も急増。コロナ禍によるEC需要の高まりにも後押しされ、売上が一気に拡大したのだという。
それまでは実家で細々と作業を続けていたが、毎日届く大量の荷物を見た親からは「一体何してるの?」と怪しまれ、部屋は在庫が詰まった段ボールだらけになる始末。これは一刻も早く自宅兼事務所を確保しないとまずい……ということで、急遽移り住んだのが今の部屋なのだ。
「とはいえ、適当に選んだ部屋ってわけでもないんですよ」とひなさん。「広々とした1Rに、物置にできるちょっとした部屋もついていて、在庫管理から梱包、発送まで完結できるなと思ったんです。それに、左右の壁の色が違うからルック撮影にもぴったり。賃貸物件なのにDIY可っていうのもポイントが高くて、不動産サイトで見つけてすぐに申込みました」
実はこのマンション、ももさん・ひなさん以外にも数多くのクリエイターが住む、隠れた人気物件。2人が内見を申込んだときも、すでに複数の競合がいたそうだが、大家さんに直接メールして見事入居を勝ち取ったのだという。ももさん曰く、「同じマンションに建築家の方が住んでいて、キッチンの棚を取り付けてもらったこともあります」とのこと。住民同士でゆるやかにつながり合うコミュニティが広がっているようだ。
休日は、近所のカフェでくつろぎ読書。そして時々、接客も。
「HER NEON」はECサイトでの販売を中心としたブランドだが、2人の自宅からも程近いカフェ「アール」の一角に常設店舗を設けている。オープンするのは基本的に週末のみ。レコードが並ぶ店内ではグッドミュージックとともにおいしいサンドイッチを堪能でき、近隣の人々にとってはサードプレイス的な存在になっている。
「最初はマンションのオーナーに『いいお店があるよ』って教えてもらったんです。何度か通ってアパレルブランドをやっていることを話したら、まずは期間限定のPOP UPをやらせてもらえることになって。そしたら意外と売上もいいし、近所の人だけじゃなく遠方からのお客さんも増えてきたので常設させてもらえることになりました。それが大体、2年くらい前ですね」
常設店舗ということで、週末は姉妹どちらかが接客に立っているものだと想像していたら、「私たちも普通にカフェのお客さんとしてくつろいでいます(笑)」とひなさん。ももさんも、「本を読んだり友達が来たら案内したり、『仕事』って感じじゃないよね」と続けて笑う。もちろん、お客さんが訪れたのならば接客を行うそうだが、仕事とプライベートをかっちり分けすぎないのも“らしさ”と言えるのかもしれない。
家づくりは始まったばかり。背伸びせず、等身大な部屋を目指して。
さて、ここからは2人の住む家について深堀り。「ブランドにまつわる作業がすべて完結すること」を目的として選んだ家だけあって、在庫置き場となるラックに小部屋、作業スペースである2人分のデスク、普段はコートハンガーだが商品を吊るして撮影のできるスペース、梱包・発送時に役立ちそうな広々とした床…と「服」を中心に整理されている印象だ。
姉妹ともに「色物が大好き」とのことで全体的にカラフルでありながら、剥き出しのコンクリートの天井のせいか、どこか無機質で落ち着いた雰囲気も漂っている。
「3年も住んでいるのに、家づくりに凝り始めたのは本当に最近のこと。今まではブランドの運営に必死すぎて、そんな余裕はまったくなかったんですよ。でも、最近はブランドも安定してきたし、この家に長く住むためにも居心地をよくしていこうと話してるんです」
では、今後目指す家の姿は?そう聞くと、「まずはDIYで収納を充実させること」という答えが。
「収納家具を置くと一気に狭くなっちゃうから、広さを確保するためにもオープン収納はマスト。今は天井の段差を生かしてラックを設置したいですね。大家さんからも『どんどんDIYして!』って言われてるので、私たちらしさ、ブランドらしさを反映しながら面白い家にしていけたらいいなと思います」
「でも、あれだよね。変なものも置きたい!」とひなさん。すると、ももさんがすかさずこう補足してくれた。
「不思議な形のオブジェとか『どこで拾ったの?』みたいなものを集めるのが好きなんです。2人ともブランドものにあまり興味がないし、最近は新品の服が似合わなくなってきちゃって。『HER NEON』でも、部屋の中でも外でもリラックスして着れる服を作ろうとしているし、背伸びせずに等身大でいようって気持ちが反映されてるんだと思います」
友達よりも、仕事仲間よりも。双子だからこそ、真剣に話し合える。
双子は、特別な結びつきを持つ存在。そんなイメージがあるからか、2人にも “一心同体”という言葉がぴったりなように思えてくる。しかし、「実際はそんなことないですよ!」とももさん。
「意外と一緒に行動することって少ないんです。私は家で過ごすのが好きで、カウンターキッチンでお菓子作りしてるけど、ひなは友達と飲みに行くことも多いし。ブランド運営にしても、お互いの得意・不得意は正反対。きっぱり役割を分けずとも、自然とひなは企画やコンテンツづくり、私は在庫管理やより細かな作業を担当することが多いです」
どこまでも「自分らしい心地よさ」を大切にしようとする2人。ブランドについても、ももさんとひなさんで同じ方向性を描けているように見えるが、それは数え切れないほどの対話に裏付けられているのだと教えてくれた。
「デザイン案は2人で出し合うんですが、時にはお互い、『これはやめよう、かっこよくないよ』って伝えることもあります。なんとなく相手の好みもわかるけど、感覚だけじゃなくてちゃんと話し合うようにしていて。双子だからこそ、ただの仕事仲間や友達同士よりも言い合えるんです。」
仕事と、趣味と、家づくり。それぞれを独立したものだと考え、うまく折り合いをつけながら向き合う人もきっと多いはず。そんな中で、ももさんとひなさんはそれらを区別することなく、壁を作ることもなく、ごちゃまぜ感を楽しみながら暮らしていた。
暮らしぶりが家の姿へと変わり、家での過ごし方がブランドのあり方へと結びついていく。「HER NEON」の服へ袖を通すときには、きっと、彼女たちの“今”のムードも肌で感じることができるはずだ。
- Photo/nae.jay
- Text/Moe Ishizawa
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