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ポップアートに囲まれて。アートな人の部屋事情|小田原 愛美(イラストレーター)
ART & MUSIC 2022.03.08

ポップアートに囲まれて。アートな人の部屋事情|小田原 愛美(イラストレーター)

アートな人が部屋にアートを飾ったら、どんな空間になるのだろう。そんな疑問から、イラストレーターとして活躍する小田原愛美さんの自宅を訪ねてみた。自作のポップアートをはじめ、さまざまな「好き」を独自のセンスでディスプレイしたリビングは、誰もが楽しめるミュージアムのよう。オリジナリティ溢れるとっておきのプライベートルームを覗いてみよう。

INFORMATION
小田原 愛美(イラストレーター)
小田原 愛美(イラストレーター)
おだわら・あいみ|シニカルな世界観をポップなタッチで表現し、唯一無二の存在感を示すアーティスト。イラストレーションのほか、コラージュや陶器など枠にとらわれないさまざまな手法で作品を制作する。2月には過去最大規模の個展を開催。ファッションブランドとのコラボレーションも数多く手がける。

インパクト抜群のポップアートが調和する壁面。

都内2LDKのレトロなマンションに、夫と愛犬、愛猫と暮らす小田原さん。自宅へお邪魔すると、トイプードルのニコが一目散に走ってきて熱烈大歓迎してくれた。その後ろで静かに出迎えてくれた彼女は、オレンジヘアとリンクさせたカラフルなニットがよく似合う。エネルギッシュな色をまといながらも独特のアンニュイな雰囲気を醸し出していて、そのギャップがなんとも魅力的な人だ。

案内されたリビングでまず目に飛び込んできたのは、たくさんのモダンアートに囲まれた 壁面スペース。中でもひときわ目を引くのが、壁にドーンと飾られた自作のSMILEパネル。パンデミックによる不安定な情勢の中で、少しでも笑顔になれたらという思いを込めて作ったものだ。オプティミスティックな笑顔がシュールに並び、見ているこちらもつられて口角が上がる。その隣には実家から譲り受けたジェームス・リジィの3Dアートが。迫力あるピースが見事に調和し、部屋全体をポップでスタイリッシュな空間に引き上げている。

ほかにも、映画『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとして知られるH.R.ギーガーの作品のポスターや、日本在住の仏アーティスト、コンタン・シャンブリのユーモラスなドローイングに自作のスケッチ画など、多彩な作品がさりげなく随所にちりばめられている。

「昔は感化されやすい性格だったので、他のアーティストの作品をあまり見ないようにしていました。でも最近は平気になってきたので、いいなと思った絵は積極的に取り入れています。ぼんやりと眺めているだけで創作欲が掻き立てられますね」

カオスなのにまとまりがある、 楽しいもので溢れるリビング。

日当たりの良い広々としたリビングの窓際には大きなソファが置かれていて、降り注ぐ陽の光を受けてゆったりとくつろげる空間になっている。ローテーブル代わりにしているシノワズリなトランクケースは、行きつけのアンティークショップ「memo」で購入したもの。

「ずっとひとり暮らしで部屋が狭かったので、広いリビングに憧れていました。このソファは私の第2のベッド。制作に集中する時以外はここか寝室でゴロゴロしています」

ソファからリビングを見渡すと、色とりどりのアートやぬいぐるみ、フィギュアたちが次々と目に飛び込んでくる。「好きなものは常に目に入る場所に置いておきたい派」と小田原さん。賑やかなのにゴチャついた印象はなく、むしろスッキリとすら感じられる、その秘訣は?

「うーん、なんだろう。強いて言うなら、キャッチーで明るいものとダークなものとでざっくりと飾る場所を分けていることかな」

自由なスピリットで、多様な趣味をミクスチャー。

ポジティブなムードを放つSMILEパネルの下には、真逆のホラーな世界が広がり、彼女の部屋の中で異彩を放っている。不気味な笑みを浮かべながら棚に収まっている映画キャラクターのトーキングフィギュアたち、ミニチュアの半魚人にエイリアン、ホラー映画のDVDの数々。どれもマニアにはたまらないラインナップで、その無秩序感もまた楽しい。

「ニセモノ感のあるスプラッターホラーが大好き。フィギュアはネットでコツコツ集めていて、中には半年待ちして出会えた子も。背中を押すと喋るんですけど、テレビを観ていたら勝手に喋り出したことがあって、その時はだいぶヒヤッとしました(笑)」

リビングの別の一角にはレコード棚とDJブースを設置。

「主に持っているレコードはオールドスクールヒップホップで、サンプリングの元ネタを掘ったりしています。DJは遊びでやる程度。コロナ禍以前は友人をたくさん招いてパーティを開いていました。みんなが思い思いにくつろいでくれるのが嬉しかったな」

オタク気質な小田原さんの収集の対象は、映画や音楽だけにとどまらない。家中の至るところにぬいぐるみがいて、独自の小田原ワールドを築き上げている。かつてリーバイスのCMキャラクターとして人気を集めたフラットエリックや、’80年代にアメリカで流行したマイペットモンスターなど、ファニーなキャラクターがありとあらゆる場所に潜んでいて、宝探しをしているような気分になる。

「ちょっと気持ち悪さのあるのものが好きで、見つけるとつい買っちゃうんです。もう飾るところがないのに(笑)」

父から受け継いだものを自分色に変えていく。

デザイナーである父のDNAを受け継ぎ、幼い頃から絵を描いたりものを作ったりするのが好きだった小田原さん。リビングにあるUSMハラーのキャビネットの上には、自作のキッチュなオブジェや陶器がずらり。
「ジェームス・リジィのフルーツの絵にインスパイアされて、同じモチーフを紙粘土で作って器に盛り付けてみました」

お気に入りのアートピースを着想源にオリジナルの派生物を生み出し、それらをインテリアの一部としてなじませている。思わずクスッと笑ってしまう遊び心に、彼女のチャーミングな一面を垣間見たような気がした。

父の影響を少なからず受けてきた小田原さんは、部屋作りをする上で実家のインテリアからもヒントを得たという。

「ミッドセンチュリーの家具が実家にたくさんあるので、そういうテイストには自然と惹かれます。父が日曜大工で作ってくれたヒョウ柄とゼブラ柄のペットチェアは、愛犬のお気に入りスペースです」

制作に没頭できる、色に溢れたワークスペース。

最後に案内してもらったのは、夫婦でデスクを並べた仲睦まじい作業部屋。ここでようやく、ヴィトラの椅子でくつろぐ茶トラのイオと初対面。ちょっと迷惑そうにされながらも場所を譲ってもらった。

キャビネットには彼女の作品をモチーフにしたという、アーティスト・ちょいブスが手がけたマグネットが貼られていたり、デスク上にはぬいぐるみコラージュなどの作品が置かれていたり…。彼女のクリエイションが日々この部屋で生まれていることを物語っている。

「デスクに座るのは制作に集中する時だけ。一度スイッチが入るとまわりの音も気にならなくなります」

デスク下のビスレーの引き出しを1段ずつ開けていくと、画材道具が種類別にきっちりと分けて仕舞われてある。そういえば壁際の大きな棚にも、書籍や資料が整然と並んでいる。物量が多いのに雑然とした感じがしないのは、小田原さんの几帳面さが活かされているからだと気付かされる。ノートを見せてもらうと、作品のアイディアがこれまた綺麗に手描きでまとめられていて、このまま展示してもいいのでは? と思うほど。「A型なので…」とはにかむ小田原さんが印象的だった。

小田原さんが直感に従い選んだ、大好きなものたち。他のアーティストたちの作品を飾ったり、ホラー映画のようにぬいぐるみをキメラ化したり 。それらが並んだ空間は、まるでそれぞれがアート作品のよう。小田原さんの素直で迷いのない生き方がストレートに表れた居住空間は、いつかまたふらりと訪れたい、そんな気持ちにさせてくれる心地良さがあった。

  • Photo/Sachiko Saito
  • Text/Eimi Hayashi
LL MAGAZINE