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スケートデッキや本を集積した壁面ディスプレイ。カルチャー好きが集まる美容室で。
INTERIOR 2022.08.23

スケートデッキや本を集積した壁面ディスプレイ。カルチャー好きが集まる美容室で。

Guru's Cut & Stand

たくさんのアーティストやスケーターが集う美容室で知られている『Guru’s Cut & Stand』。入りづらい雰囲気かと思いきや、スタッフが近所の人に気軽に声をかけたり、お客さん同士がコミュニケーションを取っていたり。気負わずに自然体でいる姿を見ると、誰にとっても心地の良いスペースであることを思わせる。一体、どのようにしてこの空間ができあがったのだろう。オーナーである久保勝也さんに話を聞いた。

当初考えてもなかった場所で湧いてきたインスピレーション

古くからの老舗が並ぶ商店街がありながら、おしゃれなコーヒーショップや古着屋、おいしいレストランなど、センスが良く気の利いたショップが立ち並ぶ街、祐天寺。古いものと新しいものが融合し、気取りすぎていないムードが安心感を与えてくれる街だ。そんな街で、2009年に美容室をオープンした『Guru’s Cut & Stand』は、駅から1分ほどの高架下の隣に店がある。目印はグリーンの外装で、いつからこの場所にあったのだろうと思わせる渋い佇まいが特徴だ。ガラス戸から店内を覗いてみると、そこにはアートがぎっしりと店を彩り、Tシャツやスケートボードのデッキまで。一見、美容室とは思えない空間が広がっている。開店したとき、祐天寺はいまのような雰囲気ではなかったと、オーナーの久保さんは話す。

独立したのが20代後半だった久保さん。表参道や代官山などのメインストリームで、お店をオープンすることは避けたいと考えていた。最初は、中目黒付近で物件を探していたが、いまの物件と立地に出会いこの場所にオープンすることを決める。

「祐天寺って、いまでこそおしゃれな街になってきましたが、当時は駅名を伝えても『どこ?』って聞き返されるほど、ローカルな場所でした(笑)。もともとこの場所も、高架下の近くなので薄暗くて、人通りも少なかったですし。外れた場所でやるのは不安でしたが、物件を見て自然とインスピレーションが湧いてきたんです。中目黒からも歩ける距離ですし、建物の前にお店がないことも気に入ったポイントでした」

時を経ることでしか作ることができない雰囲気のある建物は、木造の2階建て。もともと1階が薬局で、2階は住居だったそう。いまでは外壁がグリーンに塗られ、店の前にはステッカーが敷き詰められたベンチに喫煙スペース。そして、スケートボードのセクションが置いてある。いわゆる美容室然としないその店構えは、どこか海外のショップを彷彿とさせるラフなムードと居心地の良さがある。

「ニューヨークやロンドンのカルチャーが好きで、よく遊びに行ってました。現地のバーバーの気取らない雰囲気が好きで、いつか自分でお店を作るなら、気軽にいろんな人が遊びにこれるような空間にしたいなと思っていたんです」

久保さんが美容院で働いていた頃は、入ると少し背筋が伸びるような洗練されたサロンが多く店を構えていた時代。とくに男性や子どもには入りづらい場所も多かった。

「勤めていたサロンも敷居の高い雰囲気がありました。いまとなっては、若い人でも入りやすい床屋さんが増えてきましたが、当時は商店街にあるような理髪店さんくらいで、男性でも気軽に入れて、スタイリングの希望もかなうような場所は少なくて。自分と同じようなジャンルの人や周りの友人が、行きやすい場所があったらいいのになと感じていたんですよね」

目指したのは海外にあるバーバーショップ

ガラス戸を開けると、入ってすぐに待合のソファー。その奥に受付がある。普通は、受付をしてから待合の席へ通されることが多いが、『Guru’s Cut & Stand』はその逆だ。これも海外のバーバーを見習って、その流れにした。

「海外のバーバーって、待合室のテレビでバスケの観戦したり、お客さん同士でコミュニケーションとっていたり。なんなら髪の毛を切らない人でも、休憩してる光景をよく見ていて。この店も、美容室に行く目的がなくとも、出入りを自由にしたかったんです。いまは使ってないですが、ここのスペースでテレビデオからスケートビデオを流していました。最近はデータが多いですけど、昔はVHSやDVDでないと見れないものも多かったんですよね」

自身もスケーターであり、スケートカルチャーにも影響を受けてきた久保さん。周りの友人やお客さんでもスケーターが多く、周りからVHSを提供してもらったり、試写会をお店で行ったりもしていたそう。ほかにもお店の中には、スケートデッキにアパレル、アート作品にCDまで。ストリートの香りがするアイテムが所狭しと並んでいる。

「お店を見てもらうとわかると思うんですが、本当にモノで埋めつくされてますよね(笑)。置いてあるTシャツやスケートデッキなど、ほとんどのものが周りの友人や知り合いが手がけているものです。私物もありますが、入り口の一角にあるアパレルや、中程にあるTシャツ、階段下のスケートデッキは売り物です」

オープンした当初、周りにはセレクトショップなどもなく、ましてや美容室でアパレルやスケートデッキなど置いている場所はどこにもなかった。その面からも、髪とは関係のないアイテムを置くことにおもしろさを感じていたそう。

「ニューヨークのお土産屋さんって、STANDっていうんですが、そういう意味合いも込めて、『Guru’s Cut & Stand』って名付けたんです。お店をスタートしたとき、とにかく自分たちの好きなものややりたいことを詰め込もうって思いながらお店作りをしていったので、その気持ちがこの場所に反映されていると思います。独立した当初は限られたお金のなかで、施工しなくてはならなかったので、結構DIYな部分が多いですし」

これまで見てきたものが凝縮された内装

ヴィンテージムード漂う天井に、黄色く塗られた鉄鋼。組み方が特徴的な木素材の床。鉄鋼で出来た棚に、赤く塗られたトイレ。お店を見渡すと、場所ごとに興味をそそられるデザインのアイディアがたくさん落ちている。「天井は実は2階の床なんです。天井を一枚剥がしたら、鉄鋼も出てきて。自分たちでこの色に塗りました。ずっと上を見ながらの作業だったので、首が疲れましたけど(笑)」

床はアメリカのセルティックスのバスケットコート、鉄骨の本棚は古着屋から。久保さんがいままで見てきたものをベースにデザインされた店内は、どのスペースも興味深いエピソードがたっぷりだ。

「トイレが赤って、最初は驚かれたんですけど、店の外がグリーン、鉄骨がイエロー、そしてトイレは赤でラスタカラーの配色なんです(笑)」

これまで久保さんやお店のスタッフの琴線に触れてきたカルチャーが、血液のように流れている店内。階段をあがって2階へ行くと、ホワイトの天井や、ピンクなどの淡い色で彩られ、1階とはまた違った雰囲気の空間になっている。

「周りに子どもを持つ友人が増えたこともあって、オープン当初は2階を子連れ専用の場所にしていました。昔は子どもNGな美容室が多かったのもあって、かなり反響がありましたね。いまは働くメンバーも増えたので、普通にここでも髪を切っています。1階下より少しファンシーな雰囲気ではありますが、特段子どもを意識したわけではありません(笑)。けど、無意識にそうなっていたのかな」

次世代へも繋がれていくアートたち

1階と2階に共通するのが、飾られているアートの量。ムラケンさんの撮影した写真、小川洋平さんが書いた絵、1階の壁にはHITOTZUKIさんの絵が描かれている。ほかにもグラフィック作品やイラスト、はたまたスピーカーまで。さまざまなアーティストの作品が壁という壁に置かれている。自宅にも多く所有していると話すが、お店と同じような感覚でジャンルは無差別。置き方にも決まりはない。

「周りにアーティストが多いのもあって、自然とこうなりましたね。自分で所有しているものもありますが、これ置いてくださいって感じでラフに店へ貸出してくれてるアーティストもいます。それで、展示するときにここから持ち出したりとかして(笑)。外にある大きな額は、3ヶ月に一度アーティストを変えていて、オープン当初からあるものです」

アートボックスと呼ばれるそのスペースは、10年以上にも渡りさまざまなアーティストの作品を飾ってきた。基本的には久保さんの周りのアーティストにお願いしているが、最近では「どうしたら飾らせてもらえますか」という声をもらうこともあるそうだ。

「周りにいるアーティストとなにか一緒に出来たらなという思いで、作ったスペースですが、そういった声をもらえるのは嬉しいですよね。友人の子ども世代でもアーティストが増えてきたりして。世代が繋がれていく感じも面白いです。これからも世代を超えて街に根付くようなお店に出来たらいいなと思っています」

とにかく久保さんやスタッフの「好き」と思うものがぎゅっと詰め込まれた店。例えモノが多くても、空間が雑然としていないのは、あえて意識をしないバランスでラフに置かれているからかもしれない。それがきっとお店の居心地の良さやスタッフの人柄にも繋がっているのだろう。そんな『Guru’s Cut & Stand』は、これからもきっとこの街で多くの人を暖かく迎えいれ、たくさんのインスピレーションを与えてくれる場所に違いない。

INFORMATION
Guru's Cut & Stand(美容院)
Guru's Cut & Stand(美容院)
グルズカット&スタンド|2009年に祐天寺にオープンした美容室。ヘアカットだけでなく、Tシャツやスケートデッキ、CD、小物まで取り扱い、ストリートカルチャーの発信地にもなっている。
  • Photo/Harumi Shimizu
  • Text/Fumika Ogura
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