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SIRUP|壊してもいい心地よさ。“全力を出し切った自分”を思い出させてくれるソファ
ART & MUSIC 2023.09.15

SIRUP|壊してもいい心地よさ。“全力を出し切った自分”を思い出させてくれるソファ

自身のルーツであるR&BやゴスペルにHIPHOPを融合したジャンルレスなサウンドと、ラップと歌をシームレスに行き来する自由な歌唱が魅力のシンガーソングライター、SIRUP。外出自粛を余儀なくされたコロナ禍に、閉塞感を振り払おうと今住んでいる家に引っ越したという彼に、居住空間へのこだわりと理想の暮らしについて話を聞いた。

INFORMATION
SIRUP(シンガーソングライター)
SIRUP(シンガーソングライター)
ラップと歌を自由に行き来するボーカルスタイルと、自身のルーツであるネオソウルやR&BにゴスペルとHIPHOPを融合した、ジャンルにとらわれず洗練されたサウンドで誰もがFEELGOODとなれる音楽を発信している。 2021年には2nd フルアルバム「cure」をリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVALʼ21」に、国内のR&Bアーティストでは異例となる初出演でメインステージのGREENSTAGEに立ち、圧巻のパフォーマンスを魅せた。 2022年に入ってからも世界的ポップスター「Years & Years」のRemix参加や、アイリッシュ・ウイスキー「JAMESON」とのコラボを発表、11月には自身初の日本武道館公演を開催するなど、日本を代表するR&Bシンガーとして音楽のみならず様々な分野でその活躍を広げている。

ゲストを迎えるためのリビングルームと、10代の自分に戻るための制作部屋

「僕はコロナ禍で今の家に引っ越しました。前の家はリビングルームに窓がなかったので、外出自粛期間中は特に閉塞感があって。自分の気分を変えたかったのと、友人が気軽にご飯を食べに来られるようなリビングにしたかったので、日光が差し込む気持ちの良い部屋を選びました。家具を選ぶときは『長く使えるもの』をベースに直感で選んでいます。大きい家具を購入するときは、どの時期でもどの年齢でもフィットしてくれるという視点から、北欧風の家具を選ぶことが多いですね。なので、家には木で作られた家具が多いです」

彼は「基本的に部屋は綺麗にしておきたいタイプ」だというが、音楽作りをする制作部屋だけは、特別な場所だという。

「リビングは綺麗にしておきたいんですが、制作部屋は、“綺麗にしておきたい自分じゃない自分”を許容するスペースというイメージで、多少ごちゃっとしていた方が落ち着きます。モノ作りをするとき、たまに『過去の自分の状態』でやりたいときがあるので、10代くらいの時の感情のままいられる空間にしています。子ども部屋に近い感覚ですね。あと、どっちの部屋にも好きな作品や仕事関連で作った作品を飾っているんですが、バランスを意識するようにしています。リビングは、インスピレーションを得られて、かつリラックスできるセレクト。制作部屋は刺激強めでも良いので、好きな作品をセレクトしています。ものがどんどん増えて、最近大変なんですが(笑)」

“全力を出し切った自分”を思い出させてくれるソファ

そんなSIRUPが、LIFE LABELとDoliveから生まれた家具制作プロジェクト「Who’s Props」とコラボレーション。きっかけは同レーベル主宰・林哲平のラジオ番組「What’s New FUN?」に出演したことだった。ラジオ出演から約1ヶ月半というスピードで完成したオリジナルソファは、約2年ぶりとなる全国ツアー「BLUE BLUR TOUR 2023」のファイナル公演で使用された。

「できた瞬間は、すげぇー!って感じでした。現代アートじゃん、やばいもん来たなって思いましたね」

SIRUPが想い描く理想をカタチにしたのは、気鋭の3D造形グループ・GELCHOP。著名ブランドとのコラボやショップのインテリアデザイン・什器制作などで唯一無二のユニークな作品をつくるクリエイターグループだ。

まさに現代アート作品のようなこのソファが出来上がるまでの過程は彼にとって、とても刺激的なものだったという。

「このソファを作るにあたって、根底にあったのが『再構築』という考えでした。超有名な建築家のル・コルビュジエがデザインしたソファ『LC2』をどう崩していくかっていう話し合いを何度も重ねて。僕がやりたかったのは、どんどん崩していった先の先で、『こういう風に崩れた』が完成形になるという体験でした」

できるだけ彼が元々持っていたものを使用する点にもこだわった。これも、彼の思い出の品が別の形でアーカイブされていくという、再構築の一つの形だ。

「ソファの背もたれに使用しているデニムは、僕のファーストアルバム『FEEL GOOD』をリリースした時にLevi'sさんとコラボして作ったトラッカージャケットの生地です。ここに使ったら、ずっと思い出としてアーカイブされるなと思って。あと、実は右の肘掛けの青いプラスチックの中にも、僕の服が入っています。ファイナルのステージにソファを置いたとき、ライトが綺麗に入ることを計算しながらセレクトして。自分の持っていたものが『新しく良い形で、自分の手元に来る』。これが僕のなかの一番の再構築ポイントですね」

「ニットっぽい素材の布は、どうしても僕が持っているもので適したものがなくて。それはGELCHOPさんが見つけてきてくれました。冬は膝にかけて使うのもいいかも」

ソファの「再構築」はこれだけに留まらず、ファイナル公演の当日まで、その作業は続いたという。

「実は、ライブ直前に右の肘掛けにペイントしたり、ステッカーを貼ったりとアレンジを加えたんです。本番までにソファに『生活感』を出したくて。『ステッカーとか貼っちゃうのいいんじゃない?』という話になって、自分が応援してる友達が作ったものや、思い出深いステッカーを選んでランダムに貼りました。ペイントも、なるべく元々描いてあったみたいに自然にやりたくて、かなりこだわりましたね。鉄の部分も叩いたり削ったりしています。実は僕、小学校低学年くらいまで毎日絵を描いていたので、その時の感覚を思い出しながら、短時間で集中して仕上げました」

「壊してもいい心地よさ」。「再構築」を続けていくソファ

大成功を収めた全国ツアー「BLUE BLUR TOUR 2023」のファイナルにて、ソファをお披露目したSIRUP。実際にステージで使用してみた感想は?

「『BLUE BLUR』のロゴは鉄の液体みたいなデザインで現実離れしたビジュアルなので、ステージにロゴを映し出すとき、それとは反対に『誰もが想像できる部屋』っぽいステージ演出をしたかったんです。なので、ファイナルまでは同じ形のソファに白い布をかけたものを使っていました。そしてファイナルでついに、白い布が取れてお披露目するという流れも良かったし、このツアーの世界観にすごくマッチしたソファが完成したなと思いました」

そう話す彼は、制作期間についてこう振り返る。

「僕の音楽って、R&Bっていう歴史ある音楽が根底にあって、それをアレンジしたり、ミックスしたりして作り上げていくんです。このソファづくりも『LC2』という名品を壊したり、アレンジしたりしていくという点が、僕のクリエイティブにマッチしていました」

最後に、このソファの使い道について聞いた。

「このソファは、自宅のリビングに置く予定です。僕は自宅に『壊しちゃいけないもの』があるのが落ち着かないんですが、これは“壊してもいいかな”って。それは変な意味じゃなく、このソファなら経年変化を楽しめると思うんです。これが完成形ではなく、遊びに来た友人が知らないうちに新しいステッカーを貼るとか、アップデートされていくんじゃないかと楽しみです。

それとメンタル的な話でいうと、人間って『誰かと何かした記憶』って生きていく上で大切な気がしていて、このソファには思い出が詰まっているので、部屋に置いてあると刺激になる気がします。ファイナル前に短時間で集中して仕上げた記憶も詰まっているので、何かやらなきゃいけないっていうときの心の支えになってくれる気がしますね。これからどんな風に変化していくのか、そして、どんな風に音楽作りに影響を与えてくれるのか、とても楽しみです」

  • Photo/Naoki Usuda
  • Text/Nagisa Nasu

家と暮らしをもっと楽しんで欲しいから「HOUSE IS ENTERTAINMENT」をスローガンに、様々なアーティストと特別な家具を作るプロジェクト『Who's Props』。家具を1つ置くだけで、家具を1つ変えるだけで空間が変わる。家に取り入れるインテリアの選び方1つで暮らしに彩りが加わることに気付けば、暮らしはもっと楽しくなる。

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