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17.15坪・3階建に4人暮らし。常に家族の気配を感じるオープンな間取りの家。
ART & MUSIC 2024.08.29

17.15坪・3階建に4人暮らし。常に家族の気配を感じるオープンな間取りの家。

夫婦ともに編集者である眞野さん一家が暮らす家にはドアが少ない。玄関のほかは、寝室とバスルームくらいだろうか。おかげで都内に構えられた建築面積17.15坪、延床面積28.12坪の3階建の家は、一見、狭い物件かと思いきや、中に足を踏み入れれば開放的な空間が広がっている。眞野さんが、オープンでシームレスな家を作った理由とは?

INFORMATION
眞野 邦生 /薫(編集者)
眞野 邦生 /薫(編集者)
まとの・くにお/かおる|夫婦ともに編集者として勤める。邦生さんは株式会社JTBパブリッシングに勤務し、「るるぶKids」編集長や鉄道会社への出向を経験。現在は、「るるぶ情報版」の編集長を務める。プライベートでは、都内の一軒家で2人の娘と4人暮らし。休日はキャンプや料理などの趣味を楽しむほか、幼い頃から建築物が好きで家造りも趣味の延長上に。

夫婦2人から4人暮らしへ。家族と暮らすオープンな家。

一軒家が並ぶ住宅街のなかに、突如現れる不思議な形の物件。眞野さん一家がこの家で暮らし始めたのは2023年2月のことだ。

「以前は、職場近くのマンションで妻と2人暮らしだったのですが、娘2人が生まれてだんだん手狭になってきて。ちょうどコロナ禍を経て、夫婦2人ともリモートワークが定着したこともあり、思い切って少し職場から離れたこの土地を引っ越し先に選びました」

幼少期から建築物が大好きで、中学生の頃にはテレビで「渡辺篤史の建もの探訪」を毎週見るようになったという眞野さん。これまで10回以上引越しを経験し、さまざまな物件を見てきた。

さぞ緻密な計画を持って今の家を建てたのだろうと思いきや、「建築家さんには、あまり細かい要望は出していないんです」と語る。

「建築家さんに伝えたのは、最低限の要望とコンセプトだけ。どこにいても家族が一緒に楽しめるような家にしたかったんです。だから、テレビとソファを置くためのいわゆるリビングルームは不要で、オープンな空間にしてほしいと伝えました。依頼した建築家さんも常識にとらわれることなく、自由な発想で家を造ってくださる方だったので、こんな面白い間取りの家が出来上がりました」

リビングとバスルームで会話できるシームレスな間取り。

玄関を入ってすぐ、目の前に広がるのは白いタイルでできた剥き出しの大きな洗面所。構想の最初期からこの大胆なレイアウトが提案されていたそう。外から帰ってきた子供たちも、すぐにここで手を洗う習慣がついた。

「洗面台横が広めに作られていたので“このスペースは何ですか?”と建築家さんに聞いてみると、“いろいろ使えて便利そうじゃないですか?”というざっくりした回答(笑)。実際、買い物袋や洗濯物など、ちょっと物を置く便利なスペースとして活躍しています」

天井に吊るされた鏡や照明は自由に付け替え可能。その時々の家族の暮らしや、インテリアの気分に合わせて変えるのだという。

「鏡は両面設置できるようになっています。いずれ娘たちが大きくなったら必要になると思っていますが、まだ片面だけです。照明はずっと決まらなかったのですが、最近やっとここに付けるべき照明を見つけたところです」

洗面所の奥にはバスルーム。大きな浴槽は子供たちの遊び場のひとつにもなっている。ほかの部屋からシームレスにつながった空間のため、お風呂に入りながら会話もできる。

洗面所のすぐ左手に現れるのがリビング&ダイニング。壁と床をブルーにすることで白タイルの玄関と空間を区切り、また差し色としても美しい。

ここでは、家族みんなが集まって食事をしたり、仕事や勉強をしたり。テレビを設置しない代わりに大きな窓の前にはスクリーンが取り付けられており、プロジェクターで映像を投影して楽しむこともしばしば。

リビングダイニングの奥にはキッチン。料理が趣味だという眞野さんらしく、たくさんの調理器具が並ぶ。こだわりは、キャスター付きのワゴン。配置を自由に変えて楽しめるよう、あらかじめワゴンを置く前提でキッチンを作った。

「妻も僕も料理をよくします。ワゴンをキッチン台として使って、家族みんなで一緒に料理を作ることも」

図書館のように本に囲まれて生活したい。

1階を歩き回るとたくさんの本棚が。編集者として活躍する眞野さんご夫妻のセレクトした書籍があらゆるところに散りばめられた、まるで図書館のような空間が広がっている。

「“人間は食べたものと読んだものでできている”という言葉が好きです。食べることはもちろん、読むことや勉強することを子供たちが自然に楽しめる家にしたいと思っていました」

1階には、眞野さんご夫妻のワークスペースもある。今では自宅で作業することがほとんどとのことで、DIYで作ったデスクにお気に入りのチェアを合わせて、快適な仕事場を実現。

「リモートワーク前提で引っ越してきたので、ワークスペースは必須でした。でも、実際のところ、ここ以外で仕事や勉強をすることもよくあります。自由に机や椅子を動かしたり、別の部屋に行ったり、本当に図書館のように移動できるのもこの家のいいところです」

部屋の壁にはお子さんからの手紙や、海外から買い集めたインテリアも。

「僕が学生の時に集めた絵やオブジェが今も飾られています。この家はいい意味で“西海岸風”とか“北欧風”とかテイストを決めずに作られているので、好き放題に集めた小物も馴染みます」

子供の成長に合わせて使い方を変えられる2階と3階。

家の中央には螺旋階段。そこに掛けられた淡い黄色のカーテンが仕事場とリビングダイニングを区切り、家に彩りを加える。

「下の娘はとくに、“うちには螺旋階段があるんだよ”といつも自慢げです(笑)」

階段を登った先にあるのは子供部屋だ。テレビやソファ、電子ピアノが置かれた部屋で娘2人がのびのび過ごすことができる。

さらに、3階にはたっぷりの収納も。子供たちの洋服や学校の道具、家族の趣味であるキャンプ用品などをしまう場所として活用している。

「勉強場所にしても良し、寝室にしても良し、遊ぶスペースにしても良し。今はまだ上の子が小学生になったばかりなのですが、いずれ2人で相談して使い方を決めてねと話をしています」

誰がどこに居てもいい。家族が自由に集える家。

「この家は、見晴らしがいいところもお気に入り。走るモノレールや花火大会の様子など、家にいながらいろいろな景色が楽しめます」

家をぐるりと囲むように作られた屋上に出れば、より一層その景色を楽しめる。涼しい日には屋上で食事をしたり、子供たちが遊んだりする。

屋上から見下ろすと、北と南に庭がある。たくさんの植物が植えられており、屋上から水やりもできる。まだまだ作り途中だというこの庭では最近、ビオトープも始めた。絶えず、変化し続ける家の中でも、2つの庭はこれからさらにアップデートしたいポイントのひとつなのだとか。

「この家では、良くも悪くも決まった居場所がないんです。誰がどこに居ても良くて、どこに居ても何となく家族の気配を感じられる。家具のレイアウトも、その時々の気分で自由に変えられる。そんな心地よさのある家です」

外からは一見、狭い物件のように見えるが、一歩足を踏み入れれば開放感のある空間が広がっていた。それは、家族とのつながりを大事する“思い”から生まれた空間だったのだ。

  • Photo/Hiroyuki Yamada
  • Text/Natsu Shirotori
LL MAGAZINE