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こだわりの音響空間&バイク置き場を兼ねたガレージハウス
GARAGE LIFE 2024.10.28

こだわりの音響空間&バイク置き場を兼ねたガレージハウス

日常を特別にしてくれるアウトドアリビングを採用したり、自宅の一角にサウナをビルドインしたり、壁に防音材を敷き詰めて部屋を丸ごとライブスタジオにしたりと、大きく様変わりしている家の在り方。そこでLIFE LABELでは「◯◯◯ in da house」と題し、自宅に“好き”を体現する人たちの“趣味(仕事)部屋”を取材。今回は、自身で内装を手がけた<ティープラスター>の代表、水口泰基さんの自宅にお邪魔。そこには長年情熱を注ぐ、趣味のバイクと音楽を同時に楽しめる空間が広がっていた。

INFORMATION
水口 泰基 (工務店 代表)
水口 泰基 (工務店 代表)
みなくち・たいき|1982年、静岡県生まれ。自動車整備士、左官職人を経て、「made with soul.」をコンセプトに自然と人の魂が息づく空間づくりを目指す工務店<ティープラスター>を設立。横浜を拠点に、天然素材を使った建築設計・施工・リノベーション・無垢材を使用した家具の製作販売・シェアスペースの運営など、幅広く事業を展開する。好きなものは、古着と旧車、音楽。

いかに気持ちよく、愛車と暮らせるかどうか。

フォルクスワーゲンのタイプ1、通称“ビートル”(76年式)。ルックスこそ可愛らしいが、排気量を1.6Lから2.2Lにボアアップしてあるためパワフルな走りを併せ持つ。

「もちろん持っているものは変わっているけど、軸にある“好きなモノ・コト”は、中・高時代から基本的に同じ」

そう言いながら、自宅1階のガレージに案内してくれた水口さん。敷地内にはシボレー・ノバ(65年式)も停まっていたが、「最近、これを走らせるのが楽しくて」と新たにビートルを迎え入れ、それを囲うよう10台のバイクがガレージに収容されていた。

横浜市の閑静な住宅街にひっそりと佇む水口さん邸。外壁には防腐性に優れるウエスタンレッドシダー製のベベルサイディングを採用。

3年前に建てられた水口邸。旧い乗り物と長く付き合うためにはガレージハウスであることが絶対条件ではあったが、どんなに好きなクルマやバイクを所有していても、気持ちよく走れる場所がなければ意味がない。そのため、拠点選びも重要だったという。

「実はこの家を建てる前から同じエリアに住んでいるんですけど、この辺りは産業道路が通っていて、信号や渋滞などにハマまることが少ない上、高速の乗り口も2〜3箇所あるためどこへ行くにもアクセス抜群。乗り物好きには最適なエリアなんですよ」

そんな水口さんが“乗り物”に魅せられたのは、中学2年生の頃。2コ上の先輩から「バイクを買ったから乗せてやるよ」と言われ、後ろに乗せてもらったのがきっかけだった。

「ヤマハのTWっていう、今見るとオモチャみたいなバイクなんですけど、それでも当時はめちゃくちゃデカく見えて、『うぉ、カッコいい』って。颯爽と風を切って走る感じにも痺れましたね」

愛情を注いだバイクたちは、いずれ子供たちへ。

ガラス戸を挟んだ奥のスペースは、水口さんの寝室。

いち早く自分のバイクを手に入れるため、高校時代はアルバイトに明け暮れ、稼いだバイト代をすべて趣味のバイクに充てた。

「初めて手にしたのは、ホンダのスティード。当時アメリカンが流行っていて、スティードだけでも2台乗り継ぎました。その後、ヤマハ・セローやSR、XT、ホンダ・XLなど、いろんなオフロードに乗っていたんですけど、趣味が充実する一方、このままでいいのか?と、我に返って。21歳ごろまで自動車整備士として働いていたんですけど、10年後、20年後の自分の姿が想像できてしまい、それだと面白くないので、もともと興味があった建築業界に飛び込みました」

14年間大切に乗り続けている、バイク乗りの憧れ〈ハーレーダビッドソン〉のショベル。

最近ハマっているという〈ドゥカティ〉のバイクたち。

「それから左官職人として修行をはじめて。当時所有していたバイクをすべて売っ払い、下積み時代の4年間と、独立してから安定するまでの4年間、計8年はひたすら仕事に没頭しましたね。20代の一番バイクに乗りたい時期に我慢していたからこそ、再びバイクを手にするなら憧れのハーレーダビッドソン・ショベルだなと。そこから徐々に、パンヘッドを買ったり、大人になってからはドゥカティにもハマったり」


水口さんが代表を務める<ティープラスター>がガレージ内装を手掛けている。

バイクの修理・加工などは、バイクユーザーにとっての醍醐味といえようか。それこそ、水口さんも若い頃はセルフでのバイクいじりに悦びを感じていたようだが、現在はそんなバイクとの付き合い方が少し変わったという。

「自分が今の仕事に誇りを持っているからこそ、他ジャンルのプロにはリスペクトを持っています。その道に誰よりも人生を賭けているプロの技術を、対価を支払うことで得られるのなら、断然そっちの方が良いじゃないですか。最低限のメンテナンスはもちろん自分でやりますけど、基本的にはプロにお任せ。このバイクたちを次世代に遺すのも、旧車乗りが果たすべき責任ですので」

自分だけの世界に誘う、こだわりの音響装置。

5人息子のパパである水口さん。休みの日は子供たちを連れて外で遊ぶことが多いため、ガレージで過ごす時間は以前に比べ減ってきたようだが、隙間時間を見つけては、ここで音楽を流しながら愛車を眺めるのが密かな楽しみになっている。

「バイクだけでなく、レコードを聴くのも学生時代からの趣味で。親戚のおじさんがヤマハの音響セットを譲ってくれて、それを使ってレコードをよく聴いていましたね。親父たちがレコード世代だから、レコードやカセットテープも“お古”をもらったりして……」

「DJの友達なんかはレコードをバンバン買い漁っていたけど、自分はDJでもないから、好きなものを少しずつ買い足して。全部で300枚ぐらいはあるのかな。アンテナ張っていろんな音楽に手を伸ばしましたけど、結局、自分の思春期に聴いていたところに戻ってくるという。それこそ、小さい頃に車中で流れていたザ・ベンチャーズとか、ザ・ビートルズとか、ド定番のアメリカンミュージック。今の70代ぐらいの人たちとツボは同じです」

ガレージは、自分だけの極上オーディオルームに。マッキントッシュの高出力アンプや、JBL、BOSE、ヤマハのスピーカーなどが並ぶ。

「オーディオによって聴こえ方が全然違うので、流す音楽のジャンルや年代によって使い分けています。例えば、ダイアナ・ロスの曲が聴きたいなってときには女性ボーカル向きのJBL L16に繋いだり」

ガレージにそのままアクセスできる、寝室中心の家づくり。

「趣味の時間が減ったとはいえ、どんなに忙しくても夜15分間だけガレージに。夏は暑くてすぐ戻ってきたりするんですけど、寝る前のひと時を楽しめるように、生活動線にガレージまでのアプローチを取り入れました」

天井にぶら下がる“ひょうたん”のようなインテリアは、なんとスピーカー。チルな音楽を聴くのに最適だという。

寝室はパーソナルなスペースだからこそ、心安らぐ空間作りが必須。できるだけ近隣建物と距離を置くように作られた寝室は、さらに窓の外に植林をすることで、外の明かりを適度に取り入れながらも、外からの視界をシャットアウト。室内にも観葉植物を取り入れ、リラックスできる空間に昇華していた。

広々とした開放的な空間を演出する高い天井。

「建築という仕事柄、修業中含めて何千件っていう住宅を出入りしてるので、良い家の条件が全部頭に入っていて。なかでも、天井が高いってのは空間作りにおける正義だと思うんですよね。空調だの何だのコストはかかるんですけど、南向きの片流れの家で、天高が4mぐらいあって、トップライトさえあれば……。夏は太陽が真上に上がるからそんなに暑くはならないんだけど、冬は南風で太陽が下がる。そうすると、陽光がたっぷり注ぎ込む。長年の経験則から、これはスムーズに決まりましたね」

大家族ならではの工夫。「朝支度がいずれバラバラになるだろうから、サッと朝食を済ませられるカウンターキッチン風に」

玄関横にあつらえた水口さんのクローゼット。「親父、これちょっと貸してって言われるのが待ち遠しいです」

一方、普段からいろんな造作を手掛けているからこそ、「自宅はシンプルな造りにしたかった」と話す水口さんですが、「子供達の手垢で汚れるんだったら、いっそのこと絵を取り入れよう」と、大好きなグランドキャニオンを壁一面にあしらった。大胆かつ遊び心あふれる壁画には、愛する息子たちの後ろ姿も描かれていた。

大きくなった息子たちと、いつかツーリングできたなら。

「ひとりの趣味時間も大切にしていますけど、『パパ、ドゥカティの後ろ乗せて!』と、息子たちから誘ってくることもあって。彼らが大きくなったとき、どんな時代を迎えているかはわからないけど、いずれはこのバイクたちも5人それぞれに譲る予定です。僕が親父からレコードを受け継いだように、彼らもこの愛車に情熱を注いでくれたら嬉しいですね」

  • Photo/Ryosuke Yuasa
  • Text/Chihiro Ito(GGGC)
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