- こがけん
- こがけん/1979年、福岡県生まれ。2001年、東京7期生としてNSC吉本総合芸能学院に入学。2019年、「R-1ぐらんぷり2019」で決勝進出。2000年、おいでやす小田とユニットを組み、「M-1グランプリ2020」準優勝。映画トークライブ「こがけんシネマクラブ」を主催する等、映画好きとして知られる。
- Instagram - @kogakenkoga
映画好きになったきっかけは、3歳ぐらいの時。実姉からの“刷り込み”だったと話すこがけんさん。「『チャップリンの独裁者』や『モダン・タイムス』を何回も観せられたんです。中でも『ブルース・ブラザース』はとんでもない回数観せられました(笑)。でも激しい暴力描写もないし、子供でも楽しめる。ジェームス・ブラウンもアレサ・フランクリンもレイ・チャールズも出てきて、音楽面でもすごい映画ですが、サントラもめちゃくちゃ質が高い。今思えば、洋楽の英才教育を受けていたのかも。そういうふうにして映画を好きになって、小学生時代は『映画を観に行く』って言ったら、親が小遣いをくれたんですね。そのお金を持って休みの日は早い時間から映画を観に行って、2本同時上映を楽しんだ後、映画館を出たらもう夕方、みたいな体験が好きでした」
こがけんさんの映画愛の深さと知識量はみるみるうちに広まり、映画関連の仕事も多く舞い込むようになった。1番緊張したのが『金曜ロードショー』の放送直前に放送される『まもなく金曜ロードショー』で、放送作品のみどころについて語ることになった時。「まさか自分があの役を担うと思っていませんでした。(『金曜ロードショー』の解説を長らく務めた)水野晴郎さんの背中がうっすら見えるわけですから(笑)。でも観ている人の中には『芸人がしゃしゃり出てきてるんじゃないよ』っていう気持ちの人もいるし、映画はマニアも多いジャンル。だから一言一句間違えられないっていう気持ちでやっています」
最近は、映画好き芸人仲間であるチョコレートプラネットの長田庄平さんと遅い時間帯に映画館に行くことが多いそう。「映画を観て、その後、長田の車で家まで送ってもらう間にふたりでキャッキャッ感想を話すのが習慣になってます」
こがけん的〝おうち映画〟おすすめ3選
“LIFE”に必要なものが詰まっている。
『シェフ 三つ星フードトラック始めました』(2014年) 監督:ジョン・ファヴロー
「2014年のアメリカ映画ですが、この映画を観てキューバサンドが食べたくならない人はいないと思います。キューバサンドブームの火付け役になりましたよね。人間の“食べたい”っていう欲求が、ポジティブに生きることに直結することを描いているのがすごく良い。
一流レストランで総料理長を務める主人公がクビになって、失意の中で訪れたマイアミでキューバサンドのおいしさを知り、それをフードトラックで移動販売して大成功する話なんですが、はっきり言って『こんなに人生うまくいかないだろう』って思うところもあるんだけど、悪人がひとりも出てこないし、ここに出てくる人たちの人生はうまくいってほしいと素直に思える。キューバサンドだけじゃなくて、出てくるすべての料理の調理行程の映像が本当に素晴らしくて、観ているだけでよだれが出てきちゃうぐらい。食べ方もおいしそうなんですよね。映画って、唯一香りは味わえない表現だけど、匂ってきそうなんです。あとサントラも最高。選曲も曲順も素晴らしい。この映画のサントラを流しながら料理していると、マジではかどります。
監督のジョン・ファヴローは『アイアンマン』の1と2を撮った人なんですけど、あの大作シリーズの3の話を断ってまでもこの映画を撮りたかったそうで、めちゃくちゃ熱量を感じる作品になっています。仕事一筋で息子とちゃんと向き合ってこなかった男と息子が交流を深めるロードムービーとしても面白くて、家族の在り方を考えさせられる。“LIFE”に必要なものが詰まった映画ということで挙げさせてもらいました」
男が憧れる生き方の実践者。
『ビッグ・リボウスキ』(1998年) 監督:イーサン・コーエン&ジョエル・コーエン
「コーエン兄弟のカルト的人気作品なんですけど、次々に個性的なキャラクターが出てきて、何も解決しないまま話が進んでいく。それがまるでオフビートなシュールなコントを見ているみたいなんです。登場人物ひとりひとりの個性が異常なほど立ってるのが何よりの魅力。
ジェフ・ブリッジスが演じる主人公が行く先々でホワイトルシアンっていうカクテルを飲みまくる話なんですが、彼の服装がガウンに生地の良さそうな短パンを履いて、サングラスかけて長髪でサンダル。クズと優雅の間を浮遊する緩さというか、無敵な存在感を発しててめちゃくちゃイケてるんです(笑)。彼こそが男が憧れる生き方の実践者かもって思わせちゃう説得力に満ち溢れてる。辛い時も、心にデュード(主人公)を飼っていれば乗り切れる感じがある。
1980年代の映画には、ダン・エイクロイドだったり、エディ・マーフィだったり、ビル・マーレイだったり、このデュードみたいなキャラクターがいたんですけど、どんどんいなくなっていったんですよね。『ゴースト・バスターズ』だって、とんでもない敵と戦ってるのに自分たちの型を崩さずに、『こいつらだったらなんかやってくれそう』っていう雰囲気を醸し出してる。でも、世の中がシビアになってくるとそういうキャラは減ってくる。なのにデュードは『時代なんて関係ねー! 俺はYahoo!ニュース見ねーし、SNSもやってねー!』って感じで、家でボーリングの音をウォークマンで聞いて、ホワイトルシアン飲んでペルシャ絨毯を愛でてる男。多分働いてないんだけど、全然追い込まれてもない。僕は、デュードが家でくつろいでるだけの映像作品が2時間とかあっても、間違いなく観るでしょうね。これまで全くラグに興味がなかったとしても、鑑賞後に立派なラグを検索してしまう確率200%の映画だと思います」
中国のアニメのすごさを思い知らされた。
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』(2019年) 監督:MTJJ
「中国制作のアニメなんですが、SNSであるアニメーターの人が『とんでもないアニメ映画を見つけてしまった。作画がえぐい。このレベルを中国という大資本の国にやられたらヤバい』っていうようなことを書き込んで、そこから評判が広がってロングランになったんです。僕もその盛り上がりを知って観に行ったんですけど、まるで日本の人気のアニメの設定を全部ぶち込んだみたいな作品で。それだけの要素をぐちゃぐちゃにならずにひとつの作品に落とし込むのってすごく難しいと思うんですけど、めちゃくちゃ理路整然とまとめられている。
僕は作画が素晴らしい『AKIRA』とかを観てきた世代なので、なかなかアニメのアクションシーンで感動できる作品って少ないんですけど、『羅小黒戦記』は脳の処理が追いつかないぐらいのスピード感なんです。久しぶりにアニメのアクションでワクワクしちゃいました。終盤の能力者たちが連携するシーンが特にかっこいい。ただ、いろんな登場人物が出てくるんだけど、背景が語られないんですよね。『あいつ何だったんだろう?』って思って即調べる、みたいなところも現代的だと思います。
いろんな意味で『中国のアニメ映画ってこんなにすごいんだ?』って思わされた作品です。主役のシャオヘイは黒ネコの妖精なんですが、そもそも親的な存在がいなくて、どこにも帰属してない。それで森に住んでたんだけど、森を追われてホームがなくなってしまい人間と出会う。『自分のホームって一体どこなんだろう?』っていうメッセージがあるわけなんですね。ただ単におもしろいってだけでなく、そういう理由もあって今回の企画に合うかなと思って挙げました」
おすすめ作品に対する熱いレコメンドを寄せてくれたこがけんさん。後編では、よりおうち映画を楽しむための〝こがけん的流儀〟を伺う。お楽しみに。
- Photo/Kyosuke Azuma(tokyojork)
- Text/Kaori Komatsu
- Edit/Shoko Matsumoto
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