MEGUMI × 内山 拓也 × PES| 夫婦が記録し続けた色彩豊かな思い出のカタチ
あの人が撮ったエンタメ
家を暮らしをもっと楽しんでほしいから、「HOUSE IS ENTERTAIMENT」をスローガンに、新たなクリエイターを応援するメディア『filmbum』が誕生! 様々なジャンルで活躍するクリエイターたちが、エンターテインメントな日常を映像化したら、どんな作品ができるのだろうか? 各監督に作品のコンセプトや家への想いを聞いてみた。今回は『LAYERS』を手がけた、MEGUMIさん率いる豪華クリエイター陣にスペシャルインタビューを決行! 作品が完成するまでの裏話や、エンターテイメント談義に花を咲かせてくれた。
- 企画・プロデュース|MEGUMI(俳優・タレント)
- めぐみ|1981年生まれ、岡山県倉敷市出身。タレントとしても活躍。27歳で結婚し、28歳で長男を出産後、本格的に俳優業にも進出。近年は金沢にて『Cafe たもん』の経営、ウェブメディア「+COLLABORATE」を手掛けるなどマルチに活動。
- Instagram - @megumi1818
- 演出・脚本|内山 拓也(映画監督)
- うちやま・たくや|1992年生まれ、新潟県出身。学業と平行してスタイリスト活動を始め、23歳で初監督作『ヴァニタス』を制作。M Vや広告を手掛けながら『佐々木、イン、マイマイン』で劇場長編映画デビュー。同作で新藤兼人賞など新人賞を総なめにした。
- Twitter - @_takuyauchiyama
- 音楽|PES(アーティスト)
- ペス|2001年より活動を開始し、パフォーマンスから作詞作曲、楽曲プロデュース、グラフィックデザインまで幅広い活動を行う。2018年には主催レーベル “HOLON SOUNDS” を設立。フレグランスブランド「PADROL」を手掛けている。
- Instagram - @pepes_jp
家は、記憶のスイッチみたいなものかもしれない。ー 内山拓也
このフィルムは、MEGUMIさんのアイデアをもとにスタート。そこに映画監督を務める内山拓也さんが脚本と監督を手がけ、PESさんが音楽で彩りを加え、クリエイティブな作品が完成した。ある家で暮らす不思議な夫婦の生活を丁寧に描き出すこの作品には、何度も見返したくなるような至福の映像美が散りばめられている。見かけは子供のままに歳を重ねていくこの夫婦の目に映る日常とはいったい何なのか。聞きたいことは色々あるけれど、まずは自身が育った家の原風景について語ってもらった。
PES:僕は頻繁に引っ越しする家庭に育ったんです。母親の兄が住職をやっていたんですけど、2年くらいそのお寺に住んでいました。それこそ「ザ・お寺」っていう場所で、そこはすごく覚えてますね。
MEGUMI:私の家は、溜まり場って感じでした。いろんな人がたくさんきて、おしゃべりしたり、料理したり。
PES:今と変わってないですね(笑)
MEGUMI:そう、家が溜まり場になりがち(笑)
内山:僕も子供の頃は引っ越しが多い家庭でした。一軒家から平屋、その後に小さなアパートに移って。どんどん変化していく移ろいがあった気がします。子供の頃見ていた風景って覚えていますね。家の周りにいた人とか、風景とか、色々思い出してきました。家は記憶のスイッチみたいなものかもしれないですね。
PES:わかる気がするなぁ。僕なんか、今でも昔住んでいた家の近くに行った時は、ふらっと車で立ち寄ったり、時々見に行きますよ。結構綺麗になってたり、そうでもなかったり。
作りたかったのは、キャラが濃い人たちが家を彩っていく作品 ー MEGUMI
ジャンルは異なれどクリエイティブな現場に身を捧げる3人にとって、やはり自身の創造のベースとなる家や日々の生活はとても重要な部分。何かを発想するにあたって、アイデアが浮かぶ場所とはどこなのだろう。
内山:お風呂はアイデアが湧く大切な場所です。シャワーを浴びていても、浴びているのを忘れるくらい集中する瞬間がありますね。シャンプーしたのを忘れて、もう一回シャンプーしちゃったり。
PES:めちゃくちゃ頭皮が綺麗になってるね(笑)。俺は車を運転しながら曲を考える事が多いかな。意識が曲に集中できるんだと思う。クリエイティブって “~ながら” の日常の中で思いつくことが結構ありますよね。
MEGUMI:私は部屋を片付けながら、考え事をすることが好きかな。企画や台詞も片付けながらスタートラインに立っていくという感じですね。
PES:ストーリー発想の出発点もそこからだったの? 子供を主人公にするというのは決まっていたのか、それとも衣装のイメージが決まっていたのか。
MEGUMI:アイデンティティが強い夫婦の話を作りたくって。私の周りには、キャラが濃い人たちがたくさんいるんだけど、そういう人たちがいる家ってどんな家なんだろう? というところから企画をスタートしました。綺麗なお家のCMってよくあるんだけど、そういう作品じゃなくて、キャラが濃い人たちが家を彩っていくのが良いと思ったんですよね。
内山:僕はMEGUMIさんが思い描いたアイデアの箇条書きを最初にもらったのですが、「よくわからないけれど一度考えます」って答えました(笑)。それを咀嚼して、ストーリーを組み立てて1を100にする作業を続けました。
MEGUMI:絶対やって欲しいこととか、見たいシーンとか、そういう “点” でしかなかったものに、監督がプロセスと理由をつけて、説得力を持たせてくれたんですよね。
内山:僕の映画は主人公のキャラクターを作り込むことを着想にして、物語がついてくるというやり方をしているので、今回の出発点はそれとは逆の作業でしたね。点を作るとキャラクターがその通りに動かなくちゃいけなくなるので、僕はむしろ点を打つことを避けるんです。でも今回は点を打ちまくられてたので(笑)、それを使っていかに面白くしていこうかと考えました。
MEGUMI:無礼だったらすみません(笑)。初めてのプロデュースだし、わからないことがありすぎて。
内山:無礼だとは思いませんでしたよ。でもとても難しいことを簡単に言うなとは思っていました(笑)。ショートムービーは何度も観たいと思ってもらえるように仕上げることが、大切なことだと思っています。簡単にサクサク観れてしまう媒体なので、「それでももう一回観たくなるモノ」を提示しないといけない。観客たちから、日常の5分や10分の時間を頂くということはどういうことなんだろう、といつも考えています。
PES:個人的には音楽を作るだけではなく、撮影に参加させてもらったのは大きかったです。何度も映像を見て、親にとって子供はいつまでたっても子供のままなんだなとか、いつの日か子供って親より大きくなってたり、支えるようになったり、逆転するんだなって改めて思いましたね。
エンターテインメントは「ハンドルの遊び」みたいなモノ。ー PES
LIFE LABELは「HOUSE IS ENTERTAINMENT」というコンセプトを掲げているが、3人が考える「エンターテインメント」とは一体何なのだろうか。
PES:僕は、精神には直結してないところにある「ハンドルの遊び」みたいなモノだと思っています。大きな震災があった時にも、エンターテインメントって何の助けにもならなかった。そんな中、ほんの少しだけハンドルを切って脱出できた時に小さな遊びが生まれて、その中にちょっと笑いが生まれたり、感動したり出来る。それがエンターテインメントなのかなと思っています。
MEGUMI:オアシス的な感じなのかな。今回の撮影現場もそうだったと感じるし、この作品のために皆で同じ方向に向かっているあの時間は、すごくロマンがありましたね。奇跡みたいに全員が同じ熱を持っていて、とてもエモーショナルな瞬間だった。良いもんだなって心から思えます。そういうのもエンターテインメントのひとつの形ですよね。
内山:僕自身「エンターテインメントって何なんだろう」と考えながら、映画に軸足を置いてるところがあります。元々スタイリストになろうと思って上京して、映像に関わるようになって、20歳ぐらいの時に映画に救われた瞬間があったんですよね。その時の経験があったから、今の自分がいる。エンターテインメントとアートって二極化でよく語られるんですけど、そんなに簡単に片付けて良いものなのかっていう疑問があって、「エンターテインメントって何?」ってみんなで考えていくこと自体が、大切ではないかなと思います。
綺麗に住むだけじゃなくて、生きてきた軌跡が家中にある方がいい。ー MEGUMI
最後に、これからこの作品を観る人たちに伝えたいことを聞いてみた。
MEGUMI:住宅というモノに対する私の概念みたいなものを反映させて作りました。子供が小さな時に描いた絵を飾ったり、生きていく中でどんどんアート作品が増えていくような暮らし方をしているので、それって楽しいよ、面白いよ、っていうのを伝えたいですね。綺麗に住むだけじゃなくて、生きてきた軌跡が家中にあるっていうのも良いな、と思ってほしいです。
内山:コロナ禍で色々な作品やものづくりの場がストップしてしまう状況で、エンターテインメントの意義が問われた時期もありましたが、この作品に関わって、やっぱりエンターテインメントは必要なんだと強く思えました。
PES:みんなで好きに楽しみながら仕事が出来ました。こうしたら良くなるんじゃないと思いながらやったのが映像にもあらわれていると思います。僕もちょっと出演してるんですが、芝居大丈夫なのか?って見てもらえると嬉しいですね(笑)。
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