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アーティスト・FACEの居心地のいい“スタジオ=居場所”。
CULTURE 2022.07.06

アーティスト・FACEの居心地のいい“スタジオ=居場所”。

FACE/アーティスト

POPでユニーク、なおかつカルチャーへの愛を感じる作風で知られるアーティストのFACEさんが自身のスタジオをリニューアル。友人である内装屋さんの「NOTE WORKS」に依頼して、この空間が生まれた。だけど、それはあくまで下地の部分。そこから自分なりに手を加え、居心地のいいスタジオが完成した。どんなところを工夫したのか? こだわりはどこの部分? 作品にはどんな影響が出た? などなど、 気になることがたくさんあるスタジオについて、FACEさんに思う存分語ってもらおう。

INFORMATION
FACE(アーティスト)
FACE(アーティスト)
台湾人の父と日本人の母を持つ、東京生まれのアーティスト/イラストレーター。 アパレル、広告、雑誌を中心に国内外問わずグローバルなアーティストとして活動の幅を広げている。 これまでにHUMAN MADE®︎、adidas、Better、SNEEZE magazine、Richardson magazine、 ISETAN、BEAMS、Foot Patrol、Disney、GOODHOODなどへ作品を提供。

『NOTE WORKS』が得意とする暖かみのある感じがいい。

FACEさんのスタジオがあるのは、都心でありながらローカルのコミュニティが息づく地域。おいしいレストランやバー、セレクトが魅力的な服屋やヴィンテージショップ、それに雑貨店なども多く、衣食住が気持ち良く揃っている。そんな地域で部屋を借りたのは2年半前。だけど、「紆余曲折あり、最近になってようやくこの形に落ち着きました」とFACEさん。まずはその“紆余曲折”を語ってもらおう。

「友人のライターと一緒にここを借りたんですけど、内見のときに『ここはこうしたらよさそうだね』とか、借りた先のことを話してたんです。そしたら不動産屋さんに『内装入れちゃ絶対ダメですからね』と釘を刺されてしまったんです(笑)」

とはいえ、早めに物件を決めたかったふたり。そこを借りることを決意したものの、「ダメ、絶対」の言葉が脳裏をよぎり、借りたままの状態が長いこと続いていたそうだ。

「ぼくも友人も趣味趣向が異なるし、お互い気を使い合ってました(笑)。借りたはずなのに作業もできないっていう状態がずっと続いていて、物置部屋みたいになってたんです。本当にもったないないですよね。それで半年前くらいに友人が抜けることになったので、ようやく本腰を入れて『やろう』と決めたんです」

そこで依頼したのが以前から知り合いで、木工職人である児玉裕史と川上大輔による「NOTE WORKS」だった。「アトリエの雰囲気がすごく好きでお願いしたいなと思っていました」とはにかみながら続ける。

「コンクリート打ちっ放しの無機質な空間よりも、『NOTE WORKS』が得意とする暖かみのある感じがいいなぁって思ってて。それでおふたりに相談してみたら、快く引き受けてくれました。ただ、『内装は絶対にダメ』っていうことだったので(苦笑)、現状復帰できるというのが条件。そこは本当に気を遣いましたね(笑)」

POPな味付けをプラスして空間を自分流にアレンジ。

そうして「NOTE WORKS」に依頼してできあがったスタジオ。窓際の壁、そして天井には木板が貼られ、それとおなじ素材でできた本棚やデスク、それに小さなラウンドテーブルが置かれ、統一感のある空間になっている。

「ぼくはモノをごちゃごちゃ置いたり、壁にポスターとかいろいろ貼り付けたいタイプなんですよ。そうゆう趣向と木の壁ってすごく相性がいいと思ってて、無機質でクリーンな感じだとちょっと浮いちゃうかなと。『NOTE WORKS』のことだから、木でくるだろうっていうのは頭の中にあって。あとはほとんどお任せで、デザインに関してはとやかく言ってません(笑)」

木のぬくもりを感じさせる空間に、所狭しと置かれる雑貨や本の数々。それに壁にはスペースがなくなるまでポスターやフライヤーなどが貼り付けられ、彩りを豊かに、そして空間をPOPな印象に味付けしているところにFACEさんらしさを感じずにはいられない。

「『NOTE WORKS』のふたりがぼくの好みをわかってくれていたんだと思います。もう知り合って長いし、同い年ということもあって通ってきたカルチャーも近い。だから共通言語も多いんです。なので安心してお任せすることができましたね」

FACEさんのデスクの上には棚が備え付けてあり、自身のフィギアなどが置かれている。「デスクも『NOTE WORKS』作です。他のお客さんのためにつくっているのを見て、ぼくもオーダーしました(笑)」。

天井にはライトを四角く設置。これが空間をモダンな印象に仕立てている。「美術館で使われるライトで、あまり影がでない設計。木板でほっこりする中、こういうシャープなものがあると引き締まっていいですよね」。

デスクの天板の側面には「NOTE WORKS」のロゴが焼印で押してある。こうしたさり気なさに職人の矜持を感じる。FACEさんも「大満足の仕上がりです」と太鼓判を押す。

少年のような遊び心を感じさせる“face STUDIO”。

FACEさんの味付けはモノを置いたり貼り付けるだけではなくて、ちゃっかり自分が使いやすいようにDIYでラックを取り付けたりもしていて抜け目がない。だけど、そうやって居心地のいい空間というのは生まれてくる。ある意味、完成形はないのかもしれない。

「このハンガーラックは自分で取り付けました。ミッドセンチュリーのデザインが好きで、スツールとかはそういうのを置いています。それに合うラックも欲しいなと思って探していたんです、『ラック、黒、四角』って検索して(笑)。それでたどり着いたのが、個人でこうしたツールをつくっている人たちが集まるサイトでした。市販で売っているやつじゃないから取り付け中に塗装が剥がれたりもするんですけど、それも味と捉えています(笑)」

その他にもスツールを自分好みの色に塗り替えたり、ギターラックを取り付けたりなど、さまざまな工夫がスタジオ内に隠されていて、まるで秘密基地をつくるような少年みたいな遊び心を感じさせる。

壁に取り付けられたギターラックは「市販のもの」とのこと。これも自身でつけたもの。「全然うまくないんですけど(笑)」と前置きを置きつつも「休憩中、気分転換に弾いたりしています」と明るい表情でFACEさんが話す。

「これはIKEAのスツールですね。好きなブランドのデザインと似ていたので、安いほうを買いました(笑)。座るところは自分のテーマカラーであるピンクに塗りなおしています」とのこと。中心に貼られたステッカーもクールだ。

壁面にはポスターやスカーフ、アート作品にフライヤー、それにミニ四駆のモーターに至るまで、ざっくばらんにいい意味で雑多な感じで貼り付けられている。「いつもこうなっちゃうんです。なんか貼ってないと落ち着かないんです」とFACEさん。

収納用のケースには「face STUDIO」のステッカーをオン。「変な名前をつけたくて色々考えたんですけど、友人にこれでいいじゃんって言われたのが『face STUDIO』でした。まぁこれでいっかとなりました(笑)」。

海外のアーティストに憧れて設置した白壁。

自分にとって居心地のいい、なおかつ自分らしい空間をつくる一方で、忘れてはならないのが本業である作品作り。スタジオなんだから、そっちがうまくいかないと意味がない。もちろんそこにもFACEさんのこだわりが詰まっている。

「海外のアーティストのスタジオみたいに、キャンバスを壁にかけて作品をつくりたくて、もともとあった壁の上に白壁をつけました。というのも、釘とか打っても脆くて落ちてきちゃうような壁だったので。そして、1面だけだとスペースが足りないと思ったので、作業がしやすいようにもうひとつ壁を増設してもらったところもこだわりですね」

以前はイーゼルなどに立て掛けて作品を描いていたけど、「若干斜めになっているから、パースとかが捉えづらくて、やりづらさを感じていたんです」とのこと。こうして壁にかけることで、ギャラリーに設置された様子もイメージしやすくなり、格段に描きやすくなったそうだ。

「最近は陰影などもつけて、キャラクターに立体感を与えたシリーズも制作しているんです。そうゆう作品は遠目からじゃないと絵の全体像をキャッチしづらかったりして、このスタジオができてからはそれが全部うまくいくようになりました。それで大き絵にもチャレンジできるようになって、自分の作風にも影響を与えていますね」

新しい作風で描かれる作品。以前は平面的にキャラクターが描かれていたが、陰影がつくことで立体感が生まれ、奥行きが見えるように。「小さいキャンバスならテーブルで描けるけど、これくらい大きなサイズは壁にかけるのがいちばんです」。

新しく設置した壁の裏側はストックスペースとして活用。「動きやすい範囲に壁を設置したことで、作業効率もアップしてます」と誇らしげに語るFACEさん。壁の側面には自身のキャラクターをステッカーで表現。

「自分の機嫌は自分でとる」を体現するスタジオ。

入居から2年の月日を経て、ようやく自分らしいスタジオを完成させたFACEさん。「むかしは汚かったから来る気が起きなかったんですけど。最近は居心地が良すぎて来たくなるようになったので、すごくよかったですね」と笑いながら話す。

「事務作業も効率よくできるし、居心地がいいからひとりでリラックスもできるし、作品も描きやすくなって新しい作風にもチャレンジできるようになりました。いろいろ状況が整いつつ、自分のスキルも上がってきて、すごくいい環境ができたなと思っています」

こうしてスタジオができたことで「絵を描くこと以外の活動や遊びにも期待が持てるようになった」となにやら意味深な発言も飛び出してきた。それは一体どういうことだ?

「この白い壁を利用して、プロジェクターを使って友達とみんなでサッカー観戦したりするのもいいなと。あと、ぼくは友人と一緒にラジオをやっていて、ここで収録をしているんです。むかしはスタジオ借りるだとか、いろいろ面倒な手続きがあったけど、そういう煩わしさがなくなったのもよかったです。本当に自分の居場所ができあがった感じ。そうやって余裕が生まれたのがいちばん大きなメリットですね」

ベースはプロにお任せしつつ、そこから自分なりに手を加え、居心地のいいスタジオをつくりあげたFACEさん。本人の言葉にあった通り、ここはスタジオであり、一方では好きなものが集まった“自分の居場所”でもある。かっこいいとか、おしゃれという形容詞ではなく、いかに自分の“好き”を集めるかが重要。「自分の機嫌は自分でとる」、そんな言葉を体現したスタジオ。そうすることで肩肘張のらない、居心地のよさが生まれてくるのだろう。それこそがDIYの本質なのかもしれない。

  • Photo/GoTanabe
  • Text/Yuichiro Tsuji
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